保育園がカフェを運営 子連れでも気兼ねなくくつろげる空間に(松栄福祉会・東京)

2020年0226 福祉新聞編集部
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メリ・メロでは中村さん(左)ら保育士がカフェスタッフとして働いている

 社会福祉法人が街中にカフェを構え、子連れの親や高齢者ら幅広い世代が安心して集える場を提供する――。東京都羽村市で二つの保育園を運営する松栄福祉会はこのような珍しい地域貢献事業を展開し、子育て世代を中心に好評を博している。

 

 2月4日のお昼時。JR小作駅近くにあるカフェ「メリ・メロ」には子連れの父母や高齢者、サラリーマンら多世代が訪れた。

 

 カフェは管理栄養士と法人の保育士ら計3~4人ほどで切り盛りする。店内は授乳室やおむつ交換台など子育て世代に優しいつくりで、車いす利用者が利用できる広いトイレも配備するバリアフリー対応だ。

 

 この日のランチは、豚のおろし煮など3種類、みそ汁やサラダ付きで500円。月曜を除く、平日のお昼時は必ず営業する。子ども向けのお話会などの子育てイベントも定期的に開催している。

 

 「絵本やおもちゃがあり、店員は保育士さんなので『子どもが騒いだらどうしよう』という心配がない。食事は野菜が多く、安心して食べられます。週に1回は来ています」。生後7カ月の次女を連れた近隣の30代の母親は笑顔でこう話した。

 

 メリ・メロは2018年5月、松栄福祉会が空き店舗を活用してオープン。橋本富明園長肝いりの事業で、社会福祉法人による地域貢献が義務付けられたことがきっかけだった。

 

 ただ、分野が違う事業に対し、保育士には戸惑いもあった。「接客の素人である私たちでやれるのかなと、立ち上げの話を聞いた時は正直不安でした」。カフェ運営に携わる保育士の中村鮎美さん(36)はこう振り返る。

 

 管理栄養士の式地亜矢さんらから、接客や盛り付けの基本を教わりながら、当初は目の前の業務をこなすことで精いっぱいだった。

 

 「保育士がカフェにいる意味を考えてほしい」。そんな状況の中、橋本園長からの一言がきっかけで、子連れの母親への声掛けをしたり、積極的に育児相談に対応したりするなど、これまでの保育経験や知識をカフェ運営の中で生かすことを徹底し始めた。

 

 その結果、育児に疲労こんぱいした母親が悩みを打ち明けてくれたことがあったほか、外出したものの、駅から半泣きの状態で駆け込んできた母親に寄り添ったこともあった。

 

 「今ではとても楽しいですし、私たち職員の成長にもつながっています。管理栄養士に食育や離乳食の相談をされるお母さんもいらっしゃいます」

 

 職員配置や集客、財源など運営面についてはどう対応しているのだろうか。

 

 職員配置では、担当のクラスを持たず、忙しいクラスや行事の準備を手伝う「フリー保育士」が2園で10人以上いるなど職員配置が手厚いため、本業(保育園)が手薄になることはないという。

 

 また、保育園とは違い、収益事業であるカフェ運営だが、「毎年赤字で、保育園からの収入でバックアップしています」。利用者は子育て世代を中心に1日平均20組前後だという。

 

 ただ、「目的は収益の最大化ではありません。子育て中の母親らが気兼ねなくくつろげ、本音を打ち明けやすい空間にしておくことが大事。稼働率が高すぎてもダメなんです」。

 

 そのため、広報は保育園、カフェでの張り紙やチラシなど最低限に絞っている。それでも、口コミで評判は広がり、昨今は遠方から訪れる人もいるという。

 

 

 

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