【相模原殺傷事件】植松被告に死刑判決 横浜地裁は責任能力を認定

2020年0323 福祉新聞編集部
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青沼裁判長(中央)=代表撮影

 神奈川県立の障害者支援施設「津久井やまゆり園」(入倉かおる園長・相模原市)で発生した殺傷事件の裁判員裁判で、横浜地方裁判所(青沼潔裁判長)は3月16日、同園の元職員で殺人などの罪に問われた植松聖被告(30)に対し、求刑通り死刑判決を言い渡した。犯行当時、被告に責任能力があったとし、19人を殺害した点について「他の事例と比較できないほど甚だしく重大である」と断じた。

 

 犯行動機については、障害者への差別思想や障害者施設での経験を重視。計画性、一貫性のある犯行だったとし、被告の精神障害は影響ないとした。

 

 判決は、「意思疎通のとれない重度障害者は不幸だ」とする被告の考えは犯行動機の中核だと指摘。障害者施設での勤務経験により形成されたとした。

 

 施設勤務で経験したことの例として「利用者が奇声を発する」「職員が流し込むように食事を与え、利用者を人間扱いしていない」などを挙げた。

 

 これに加え、過激な発言で注目される政治家やお金の不足による紛争といった「世界情勢への着目」が、生活支援に金のかかる重度障害者の殺害につながったとした。こうした動機を「到底是認できない内容だが、了解は可能。病的な飛躍もない」とした。

 

 弁護側は犯行当時、被告には大麻使用による妄想があったとして心神喪失による無罪を主張。重度障害者を不幸だとする考えと殺害行為の間には飛躍があるとしたが、判決はいずれも退けた。

 

 

責任能力をめぐる主張と判決

■検察側=責任能力あり  
 被告の差別的な発言は妄想ではなく、人格の偏り(パーソナリティー障害)に基づく「特異な考え」。被告が常習していた大麻の影響は小さい

■弁護側=責任能力なし  
 被告は大麻精神病であり、犯行当時の人格は本来の人格と不連続。「重度障害者はいらない」が「自ら殺す」となったのには飛躍がある。妄想はあった

■判決=責任能力あり  
 動機の形成過程に病的な飛躍はない。犯行には計画性、一貫性がある。大麻や精神障害が影響を与えたとは考えられない

 

 

 被害者は一部を除き匿名で審理された。判決によると、事件は2016年7月26日未明に発生。被告は知的障害のある入所者19人を刺して殺害し、職員2人を含む26人に重軽傷を負わせた。17年2月に起訴された

 

 被告は同園職員だった16年2月、犯行を予告する手紙を衆院議長に提出した後、同園を退職。自傷他害の恐れがあるとして精神科病院に措置入院した。被告の精神状態と事件に関係があるのか、注目されていた。

 

「気付き」生む環境に 日本知的障害者福祉協会長井上博氏

 植松被告は、本協会会員施設である津久井やまゆり園での仕事について「入所者を見ているだけだ」と言ったそうだが、私はこの言葉に強い違和感がある。

 

 私たちの仕事の意義は、言葉のみならずさまざまな形で表出される利用者の意思をくみ取り、その人の思いを実現していくことである。

 

 私は身内を亡くして弱っていた時、勤務先の重い知的障害のある入所者の姿を見て生きる強さを感じた。元気に働く普段の私なら気付かないことだった。そんな「気付き」の生まれる環境をつくらねばならない。近ごろ重要視される「障害者の意思決定支援」の本質はまさにここにある。障害者が地域とのつながりの中でさまざまな体験をできるよう環境を整え、その体験の様子を職員がよく見て、その人の思いに気付くことが肝要だ。

 

 被害者を匿名とした今回の裁判に象徴されるように、地域共生社会の実現と乖離かいりした厳しい現実がある。だからこそ、私たち障害福祉に携わる人間が、地域とのつながりを求めていかなければならない。

 

 

➡次ページ 公判傍聴記

 

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