30人特養、報酬減・特別加算廃止の二重苦 「少人数の強み評価して」

2020年0422 福祉新聞編集部
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利用者との距離が近いのが30人特養の強み(サンフレンズ善福寺)

 「定員30人の特別養護老人ホームは、利用者にしっかり寄り添える理想の規模」。都内の30人特養の施設長は、そう口をそろえるが、今、経営は窮地に立たされている。2018年度に介護報酬が下げられ、20年度から都の特別加算もなくなったためだ。

◆開設以来、赤字続き

 東京都社会福祉協議会会員の30人特養は12カ所ある(全国では約450カ所)。土地が高くて十分な広さを確保できず、スケールメリットを生かせないが、多くの入所待機者がいるため、採算は度外視で開設、経営してきた。

 

 その事情を酌んで、30人特養の基本報酬はこれまで、他の定員規模より高く設定されていたが、「開設以来ずっと赤字が続いている」「デイサービスの収益などで何とかしのいでいた」「経営的に法人のお荷物になっている」というのが、施設長が語る実情だ。

 

 そうした厳しい経営状況にもかかわらず、18年度に基本報酬が平均で4%下げられた。厚生労働省は、30人特養の収支差率が他の定員規模より高いことを主な理由とした。

 

 しかし、都社協が30人特養を調査(11施設を集計)したところ、17年度の平均収支差率はマイナス1・5%。18年度はマイナス3・2%と、基本報酬を下げられたことでさらに悪化していた。施設別でも、11施設中8施設の収支差率はマイナスだった。

 

都内30人特養11カ所合算の収支状況

◆特別加算は廃止

 都は2000年から、「経営支援金」として民設民営の特養を補助している。18年度に介護報酬が下げられた30人特養に配慮し、18、19年度の2年間、特別加算(1級地で1施設につき月平均約33万円)を設けた。

 

 

 しかし、20年度からは、要件を満たさないと取得できない努力・評価加算に組み入れ、職員数が少ない小規模施設(定員30~69人)に対し、一部で加算額を高くする配慮をした。

 

 努力・評価加算は計21項目。法人連携による人材育成、介護の魅力発信、講座・サロンの開催などがあるが、30人特養からすると、申請すれば取得できた特別加算と違い、努力・評価加算の要件を満たすのは容易ではない。ましてや、特別加算分を埋めるのは相当に厳しい。

 

 現状にも余裕がないため、施設長は「加算を取得するための支出があり、経営支援につながらない」「30人特養の強みを反映した加算項目があれば良かった」「今していることを認めてほしい。プラスアルファは難しい」と口々に指摘する。

◆団結して実態訴える

 30人特養の最大の特徴は、利用者との距離が近く、アットホームなこと。職員全員で全利用者の氏名、健康状態を把握でき、ちょっとした変化にも気づき、利用者家族も含め、きめ細かな対応ができる。施設長は、そうした強み、良さが評価されないことに、もどかしさを感じている。

 

 また、当初から都市部の30人特養への配慮の必要性は指摘され、自治体が計画したものを受けて開設、経営してきた経緯の中で、十分な支援がないことにも葛藤がある。

 

 厚労省は、21年度の介護報酬改定で30人特養の報酬をさらに下げる方針をすでに示しているが、今回、一堂に集まる機会を持った都内の30人特養の施設長らは、「団結して国や都に実態をしっかり伝えていきたい」としている。

全国では53%赤字

 全国の30人特養の厳しい経営実態は、全国老人福祉施設協議会が行った調査でも浮き彫りとなった。30人特養103施設の18年度収支状況などを集計したところ、53%が赤字で、そのうち1000万円以上の赤字が25%を占めた。

 

 人件費比率は70%で、特養全体平均の66%より高かった。また、主要都市から50分以上離れている遠方の施設や、物価の高い地域の施設は、より厳しい状況にあることも分かった。

 

 老施協は厚労省に対し、「少なくとも15年度介護報酬改定の水準まで引き上げること」を求める。過疎地への別段の措置、人員配置基準の特例措置などの必要性も訴えていく。

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