介護保険制度20年① 自立支援は発展途上

2020年0520 福祉新聞編集部
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制度創設時からの推移

 2000年4月に介護保険が始まって20年がたった。老人福祉はそれまでの措置制度という救貧的な施策から、社会全体で高齢者の介護を支える仕組みへと変容した。今や高齢化率が25%を超えた社会に欠かせなくなった制度の20年を振り返りつつ、制度の立案や、長年高齢者福祉に携わってきた人に、これまでの歩みや課題、展望について伺う。今号から4回にわたり連載する。

 

◆家族介護に限界

 介護保険が創設されたのは、高齢化、長寿化で増える要介護者を社会全体で支えるためだ。それまで介護は家族が行ってきたが、核家族化の進行などで家族では担えなくなってきた。

 

 また、特別養護老人ホームなどの老人福祉法のサービスは、措置制度のため利用者がサービスを選べず、病院では治療の必要はないのに退院しない「社会的入院」の問題が起きており、老人福祉と医療に関わる仕組みを再編し、要介護者を支える制度を作る必要があった。

◆制度は拡大の一途

 この20年で要介護・要支援認定者数、サービス利用者数は3倍以上増えた。一方、社会保険制度である介護保険は、サービス利用が増えれば負担も重くなるため、65歳以上の人の保険料は約2倍に上がり、介護費用は約3倍に膨らんだ。

 

 それに対応して、制度の持続性の確保に向けた法改正が行われてきたが、きめ細かい基準が設けられたり、新たなサービスが作られたりすることで、制度は拡大、複雑化していった。

 

介護保険法改正の推移

 

◆深刻な人材不足

 株式会社などが参入し、介護はビジネスとして発展。新たな雇用も生み出され、介護従事者は3倍以上増えた。

 

 しかし、家族介護の名残からか、介護は誰でもできると軽視する人もおり、介護の専門性や社会的評価が低く、若者の関心も薄いため、人手不足が慢性化している。今では事業所の7割は担い手不足とされ、職員の高齢化も進んでいる。

 

 国はこれまで介護職員の処遇改善や、介護の魅力向上などの人材確保策を講じ、外国人材の受け入れも進めてきた。だが、人材難は解消できず、担い手を確保できないため、サービスを提供できない事態も起きている。

◆改めて問う「自立」

 介護保険法の目的にある高齢者の自立支援は、20年間で目的に掲げられたほど進んでいない。

 

 理由は、介護報酬は利用者の要介護度が高いほど多いため、事業者は報酬が減ることを嫌い、要介護度を下げて自立につなげることに消極的なことがある。利用者も要介護度が下がると受けられるサービス量が減るため、自立を後ろ向きに考える人もいる。

 

 そもそも要介護度の基準はサービスにかかる時間で設定されており、自立の尺度から定められたものではない。介護の状態は人それぞれ違うので、要介護度が下がれば自立度が上がったとは単純には言えず、加齢で身体機能が低下していく中で、どこまで自立を求めるのか、その判断も難しい。

◆制度を育む意識で

 介護保険は20年で「介護の社会化」に一定の役割を果たしたが、財源と人材に大きな課題を抱え、それが社会問題化している。

 

 2025年には団塊世代が75歳以上になり、40年には高齢者人口がピークとなる。それも踏まえ、サービスを増やすため負担を上げるか、またはサービスを削って負担を減らすか。

 

 その均衡に正解を出すのは難しいが、変えるべきこと、守るべきことを見極めながら、制度を育てていく意識が肝要だ。必要な人に必要な時に、適切なサービスが届く制度を堅持しなければならない。

 

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