〈障害者就労B型〉高工賃と満足度は無関係 民間調査

2020年0522 福祉新聞編集部
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「のあのあ」には、引きこもりの人など外に出るのが難しい人も受け入れている

 精神障害者が通う作業所などで構成する全国精神障害者地域生活支援協議会(戸高洋充代表)は5月8日、障害福祉サービスの就労継続支援B型事業について、事業所ごとの平均工賃の高さと利用者の満足度に関係がないとする調査結果を公表した。満足度と関係するのは職員による個別支援であることも判明。B型事業所は2018年度から工賃の高低で報酬上評価されているが、そうした評価方法に疑問符を付けた。

 

 有識者として調査に携わった吉田光爾・東洋大教授は「B型事業所が工賃を上げる努力をしなくて良い訳ではないが、工賃だけを事業所の評価基準にするのは妥当と言えないだろう。多様な障害者の『働きたい』という思いをかなえる仕組みづくりが大事だ」とみている。

 

 調査は19年9月~12月、全国のB型事業所のうち主に精神障害者が通う1140カ所を対象に実施。312事業所から901人分の利用者票が返ってきた。

 

 この901人を事業所の平均工賃(月額)により「8700円未満」「8700~1万5000円」「1万5000円以上」の3群に分けて満足度を尋ねたところ、32点満点で中央値がそれぞれ26、26、27と大差はなかった。

 

 また、満足度の高い利用者群(27点以上)は低い利用者群(26点以下)よりも、個別に支援を受けた時間が月平均で約592分長いことが判明。生産活動の中で、職員が集団ではなく一人ひとり個別に向き合う時間の長さが満足度に関係することが読み取れた。

 

 厚生労働省によると、全国のB型事業所が18年度に支払った工賃の平均は月額1万6118円。全国的に上がりつつあるが、5000円を下回る事業所が全事業所の約6%あるとし、引き続き工賃アップするよう呼び掛けている。

 

 その「6%」に該当するB型事業所「のあのあ」(横浜市)は16年8月の開所以来、低工賃が続いた。現在は5000円。通う日数の少ない人も受け入れてきたからだ。

 

 平均工賃は支払い総額を支払い対象者数で割ったもの。作業日数の少ない利用者が多ければ平均工賃は当然低くなる。

 

 現在の登録者30人は知的障害のある引きこもり経験者が多く、週1日のみ通う人は3人、週3日の人は6人。別の作業所が肌に合わなかったダウン症の息子を持つ上原陽子施設長は「利用者が通いたいという動機を作るのが先決だ」と考えた。

 

 そのため、あらかじめ本人が通所目標日数を決めておき、その達成率で工賃の基本額を決めることにした。実入りの良い仕事より「一人ひとりがやりたいと思える仕事」も用意。特に羊毛で犬のストラップを作る作業は人気という。

 

 

「のあのあ」の作業製品

 

 その結果、この3年間で、週1日通うのがやっとだった人が、浮き沈みがありながらも週5日通えるようになる例など、工賃では測れない成果もあった。

 

 「もちろん工賃も上げたい。今秋には犬と触れあえる喫茶店を開設し、工賃増を目指す」と上原さん。一方、安定して通うのが難しい人を今後も受け入れ続けられるかという不安も抱える。

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