介護保険制度20年② 「社会保険しかなかった」立案に関わった元官僚

2020年0601 福祉新聞編集部
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和田勝氏

 介護保険の20年に点数をつけるなら85点としたい。大方の介護事業者とスタッフ、そして保険者である市町村も大変な努力を重ねて運営に当たられていることは大いに評価されてよい。

 

 介護保険以前の高齢者介護は、老人保健法による医療サービスと老人福祉法による福祉サービスの2本立てで、利用手続きや利用者負担などの面で仕組みが異なり、問題があった。

 

 老人病院は特別養護老人ホームに比べてコストが高く、スタッフや生活環境の面からも介護の場として体制が不十分だった。他方、特養などの老人福祉サービスは、措置制度の下で利用者がサービスを選べず、対象が主に低所得者に限られ、利用にあたって心理的抵抗があるとされ、サービス基盤整備も税財源に依存していた。

 

 平成元年(1989年)に消費税が導入され、ゴールドプランによるサービス基盤の整備が進んだが、バブル経済崩壊で財政が悪化する中、介護財源と良質なサービスをどのように確保するかが課題となった。

 

 私は厚生省の大臣官房審議官だった時(94年9月~96年12月)に、高齢者介護対策本部の事務局長として介護保険の創設に携わった。94年2月に細川首相が打ち出した国民福祉税構想(税率7%)が頓挫したことを契機に、社会保険方式がよいと思った。要介護高齢者の自立支援、利用者による選択、介護を社会全体で支えるという基本理念について合意が形成され、それを可能とする制度は介護保険だった。

 

 すべての高齢者を被保険者とし、保険料負担を求め、サービス利用時の1割負担を基本とした。40~64歳の現役世代に保険料負担を求める以上、高齢者にも適切な負担を求める必要があった。

 

 介護保険では生活保護との関係を改め、適用除外ではなく、すべての高齢者を第1号被保険者とし、介護保険料及びサービス利用時の一部負担を法定化し、その費用を生活保護費で手当てするように変えた。また介護報酬では、診療報酬とは違って、地価や物価などに配慮した地域差を設けた。要介護認定、要介護度別の給付限度額設定も新しい試みだった。

 

 社会保険方式は保険料を払えばサービスを受けられるという対応関係が明確で、保険料は急増する介護サービス費用の確保にも大きな役割を果たした。

 

 20年たって今や国民生活になくてはならない制度に育ってきた。

 

 難点を言えば、中立性・独立性などケアマネジメントの実態、介護療養病床の廃止から介護医療院創設に至る論議の経過、介護サービス類型の複雑化などがあり、本来、介護保険改革における第1の課題とされてきた被保険者範囲の拡大論議も停滞しており、検討が必要でしょう。

 

 また、高齢化・長寿化、サービス基盤整備の進展、サービス利用に対する意識の変化などにより、介護保険が国民生活に定着していくに伴って介護給付費が増大した。

 

 さらに、首都圏など今後急速に高齢化が進む地域におけるサービス基盤整備、介護人材の確保と定着は重要な課題だ。介護報酬の充実や公費の投入、外国人材の活用、高齢者・女性就業の促進が求められるが、一方で、保険料や利用者負担の上昇にも影響する。

 

 市町村の役割が改めて重要になってくるし、国や都道府県の支援も欠かせない。

 

プロフィール

 和田勝(わだ・まさる) 1945年生まれ。69年に厚生省入省。三重県児童老人課長などを経て、老人保健法制定や84年の健康保険法改正に従事。児童家庭局企画課長、保険局企画課長、大臣官房総務課長などを歴任した後、大臣官房審議官の時に高齢者介護対策本部事務局長として介護保険法案の立案、国会提出にあたった。

 

[視点]人材不足は死活問題

 制度開始から増大し続けるサービスに対し、担い手の確保が追いつかず、人材不足が深刻化している。

 

 介護福祉士の有資格者は162万人(2018年)いるものの、うち4割は介護に従事していない。介護職員の離職率は15・4%(18年度)と高い水準にある。

 

 介護職員の賃金アップのための加算が作られ、常勤介護職員の平均月給は30万970円(18年9月時点)まで上がったが、それでも全産業平均と比べると約6万5000円低い。

 

 対策として、介護ロボットやICT(情報通信技術)を活用し、生産性の向上に向けた取り組みが進められている。また、外国人材の受け入れも始まり、EPA(経済連携協定)や技能実習のほか、介護などで働くことを目的とする在留資格「特定技能」も創設された。

 

 介護サービスは、施設や事業所があっても担い手がいなければ提供できない。25年度には約34万人の介護人材が不足すると推計されており、人材不足は制度の死活問題となっている。

 

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