専門職による伴走支援で孤立解消 改正社会福祉法のポイントは

2020年0616 福祉新聞編集部
    • このエントリーをはてなブックマークに追加
障害福祉サービスを利用する自閉症の女性(左)が、保育園では支える側にまわる(共生型福祉施設のモデルとして特例交付金で整備された仙台市内の「太白だんだん」で)

 地域共生社会の実現に向け、市町村の相談体制を強化する社会福祉法などの一括改正法が6月5日、参議院本会議で可決、成立した。市町村が任意で行う新事業を設け、既存制度の国の補助金を再編して交付金を創設する。孤立した人が社会とのつながりを取り戻せるよう、専門職が継続して伴走できるようにする。運用に当たってはソーシャルワークを重視する。施行は2021年4月1日。

 

 新事業は「重層的支援体制整備事業」。引きこもりなど制度のはざまで孤立した人や家庭を把握し、伴走支援できる体制をつくる。

 

 困りごとの解決を目指すだけでなく、社会とのつながりを取り戻すことで困りごとを小さくするような関わりも重視する。

 

 「断らない相談支援」「参加支援」「地域づくり」をセットで行うことを想定する。

 

 「断らない相談支援」では属性や年齢を問わずに相談を受け止め、関係機関との協働を進める。「参加支援」は就労、学習など多様な形の社会参加を促す。「地域づくり」は交流や参加の機会を増やす。

 

 新しい交付金がどのように算定されるかなど詳細は未定。法案に賛成した与党議員からも「新事業の内容は分かりにくい」との声があり、厚労省は施行までに有識者会議で詰める方針だ。

 

 新事業は社会福祉法人などに委託できる。運用に当たっては、ソーシャルワーク機能が重要だとする意見が与野党から続出。参議院の付帯決議では「新事業の実施に当たり社会福祉士や精神保健福祉士が活用されるよう努めること」とされた。

 

 地域共生社会とは、「ニッポン1億総活躍プラン」(16年6月2日閣議決定)で政府が掲げた理念。支え手と受け手に分かれず、あらゆる住民が役割を持って参加できる社会を目指す。

 

 それを踏まえて社会福祉法は、前回の改正で孤立を含む「地域生活課題」(同法第4条2項)を解決できる体制を整えるよう市町村に努力義務を課し、18年度から施行されている。今回の新事業は、この取り組みを後押しするものだ。

 

 このほか社会福祉法には、複数の社会福祉法人が事業運営で連携する際の選択肢として「社会福祉連携推進法人制度」を設ける。同制度に参加する法人間で資金を貸し借りできるよう規制を緩和する。災害時の対応や人材確保・育成などで協働しやすい環境をつくる。

 

 一括改正法の一つ、社会福祉士及び介護福祉士法では、介護福祉士養成施設卒業者が国家試験に合格しなくても資格を取れる経過措置を5年延ばす。この点は野党が法案反対の理由に挙げた。

 

 厚労省検討会委員を歴任した日本福祉大副学長・原田正樹さんの話

 今回の改革は、声にならないニーズを探して受け止めようという挑戦だ。それに向けて国・地方公共団体の責務を第6条に明記した点は評価できる。
 しかし、今回の新事業は体制だけが示されたものの、誰がやるのかが十分に示されていない。
 参議院の付帯決議でソーシャルワーカーの活用が明記されたことは大きな意義がある。伴走支援、多機関協働、アウトリーチなど専門性のある職員が活躍できるだけの雇用と保障がないと続かない。予算の確保が極めて重要だ。

    • このエントリーをはてなブックマークに追加