121人感染の北総育成園ルポ〈前編〉 病院化を迫られた福祉施設

2020年0701 福祉新聞編集部
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黄ゾーンで防護服に着替える準備をする育成園の職員(北総育成園提供)

 3月28日に国内最大規模の121人の新型コロナウイルス集団感染が発生した千葉県東庄町の障害者入所支援施設「北総育成園」。5月14日に入所者全員の陰性が確認されるまで、官民連携で設置された対策本部が、全国で初めて施設を〝病院化〟して支援を行った。「施設機能の維持」「応援者の感染防止」を柱にした1カ月半の支援を振り返る。

 

 育成園は、社会福祉法人さざんか会(宮代隆治理事長)が船橋市から指定管理を任された施設。感染発生時は64人の職員が70人を支援していた。入所者は20~80代の知的障害者が多く、高齢で介護が必要な人もいた。

 

 集団感染は、3月27日にPCR検査で陽性だった職員の感染経路が不明のため、香取保健所が入所者と職員全員の検査を実施したことで判明した。当時は検査受診に厳しい基準がある中で、香取保健所の英断だった。

 

 入所者26人、職員31人が陽性の情報は、すぐに育成園、さざんか会、県、船橋市、東庄町などに伝えられた。宮代理事長は「27日の時点では何とか1人で押さえ込みたいと思ったが、続々増える感染者に愕然がくぜんとした。なんでうちの施設でと思った」と振り返る。

 

 育成園には翌28日から国のクラスター対策班の医師と看護師、香取保健所の保健師が入り、検査や治療を開始。感染者と被感染者の区分けや、環境が変わってパニックを起こすなど入所者の状況調査も行われた。

 

 対策本部の支援が動き出したのは30日。県が石出広・衛生研究所長(現健康福祉部次長)を本部長に、情報収集・連絡役の障害福祉事業課職員と看護師を育成園に派遣してからだ。石出本部長は県のPCR検査責任者。集団感染が起きたクルーズ船の乗客が宿泊療養したホテルで、区分けなどの指揮経験があった。

 

 午前7時に育成園に着いた石出本部長は、クラスター対策班医師、香取保健所長と相談し、今後の方針を決定。「施設機能の維持」「応援者の感染防止」を使命に、施設内で入所者をケアすること、施設内に対策本部を設置することを決めた。

 

 施設内でのケアを選んだのは、入所者の状況調査の結果から環境変化に敏感な人が多いこと、病院で付き添う職員もいないこと、居室が個室で区分けさえすれば感染拡大は防げると考えたからだ。「外部からの遠隔指示では対処できない。施設内に本部を置くことしか考えられなかった」と石出本部長は話す。

 

 方針は午後2時から東庄町役場で開かれた会議で関係機関・団体に伝えられた。会議後、育成園に戻った石出本部長は、感染者と非感染者の区分けを見直した。入所者が生活する赤ゾーン、濃厚接触者の職員と交差する黄ゾーン、本部職員がいる緑ゾーンに分け、各ゾーンは床にテープを貼って周知した。赤ゾーンは施設全体の約9割を占めた。

 

 また、31日早朝に2階にあった本部を1階プレイルームに移し、応援職員だけ入室するようにした。「一緒に支援する仲間だが、濃厚接触者の職員と動線が重ならないようにするにはやむを得なかった」と石出本部長は話している。

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