DVの一時避難先に社会福祉法人 安定した受け皿に〈政府〉

2020年0715 福祉新聞編集部
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女性専用の障害者グループホーム。入居者は「実家にいるみたいにくつろげる」と話す

 政府は7月1日、「すべての女性が輝く社会づくり本部」(本部長=安倍晋三首相)で、「女性活躍加速のための重点方針2020」を決定した。配偶者からの暴力(DV)の被害者の一時避難先として、空き部屋を持つ社会福祉法人を活用する方針を盛り込んだ。2016年4月から社会福祉法がすべての社会福祉法人の責務とした「地域における公益的な取り組み」として法人側に受け入れを促す。地方自治体や法人側には、柔軟に対応することが求められそうだ。 

 

 安倍首相は同日の会議で「DVの増加、深刻化が懸念されており、相談体制を強化している。被害者の気持ちに寄り添いながら、民間シェルターへの支援など対策を講じる」と述べた。

 

 DV被害者の一時避難先としては、全都道府県が設置する婦人相談所のほか婦人保護施設、母子生活支援施設がある。一方、民間シェルターの運営団体は18年11月時点で107(このうち社会福祉法人は22)あり、自治体から一時保護委託を受ける。

 

 民間シェルターが自治体から受ける財政援助は年間約2億円。民間シェルターの運営基盤は弱く、大都市と北海道に集中するなど地域偏在も顕著だ。

 

 そのため、安定した受け皿を全国的に確保することがかねて課題となっていた。

 

 そこで空き部屋のある社会福祉法人が注目され、今年の通常国会で指摘が相次いだ。

 

 改正社会福祉法案をめぐる6月2日の参議院厚生労働委員会では、山本香苗議員(公明)がDV被害者らを受け入れる団体の例を挙げ「地域共生社会の観点から介護、障害福祉、子育て支援の各分野において施設の空きスペースの有効活用をぜひ検討していただきたい」と迫った。

 

 空きスペース利用をめぐり大島一博・厚労省老健局長は、措置施設の養護老人ホームについて「措置ではなく契約による入所を定員の20%までできる」と答弁。障害福祉施設について橋本泰宏・障害保健福祉部長は「利用者の支援に支障がなければ他の用途に用いることは可能」と答えた。

 

 同11日の参議院予算委員会でも片山さつき議員(自民)による同様の提言に対し、橋本聖子・内閣府特命担当大臣(男女共同参画)が、「社会福祉法人が地域公益活動として宿泊場所を提供している事例を承知している。そうした取り組みが広がるよう検討を進めたい」と答弁した。

 

 

 重点方針は「女性に対するあらゆる暴力の根絶」を最重要課題とし、22年度までの3カ年を「集中強化期間」と位置付けた。

 

 売春防止法に基づく婦人保護事業の見直しについては、昨年10月の厚生労働省検討会中間報告が新法が必要だと提言したことを受け、「検討を加速する」とした。

 

 性暴力被害者のうち、相談することに特にハンディを抱えがちな障害者や外国人への対応は、コミュニケーション手段の拡大を進める。児童にわいせつ行為をした教員や保育士の処分については厳罰化を検討する。

 

 内閣府によると、配偶者暴力相談支援センターの相談受理件数は年間約10万件。婚姻歴のある女性の3人に1人がDV被害を経験したとする調査結果もある。

 

 また、新型コロナウイルスによる生活不安やストレスの影響を受け、同センターへの今年4月、5月の相談件数は前年同月比でそれぞれ3割、2割増加している。

 

リスクもある

DV問題に詳しい

戒能民江

お茶の水女子大名誉教授の話

 

 社会福祉法人によるDV被害者への一時的な避難場所の提供はリスクもある。男性が周囲にいると被害女性は安心できない。メンタルケアの専門職との連携も施設に求められる。単に部屋が空いているから受け入れれば良いというわけにはいかない。婦人保護事業見直しの検討を「加速する」とされたが、もっと踏み込んでほしい。昨年10月の厚生労働省検討会中間報告が「法制度上の新たな枠組みが必要」とした趣旨を踏まえ、本来なら法制化する段階に入っているはずだが、残念ながら現在そうなっていない。障害のある女性は性暴力の被害を訴えにくい。内閣府が進めてきた障害者差別解消法の見直し議論では、障害女性の受ける複合差別も論点になった。改正法に反映されることを期待したい。

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