好酸球性消化管疾患――舌下免疫療法の落とし穴

2022年0218 福祉新聞編集部
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 37年前、高校受験前日、私は授業中に突然鼻血が出て止まらなくなり、学校を早退して、耳鼻咽喉科を受診しました。診断は「花粉症」でした。花粉症とは、花粉によって引き起こされるアレルギー疾患の総称で、主なものにアレルギー性鼻炎とアレルギー性結膜炎があります。

 

 花粉が鼻に入ると、直後にくしゃみ、鼻汁が生じ、少し遅れてから鼻づまりなどの症状が起こります。スギ、ヒノキ、ハンノキなどの花粉が原因となることが多く、2月から5月ごろにかけて症状が起こります。

 

 花粉症で鼻の粘膜が荒れて、そこから出血していたのです。飲み薬は眠くなる副作用があるので、点鼻薬を使いながら翌日、受験しました。それで安心……とはならず、翌日の試験中に突然、解答用紙にぽたぽたと鼻から血が垂れてきたのです。試験監督の方もびっくりで、持参していたティッシュペーパーで鼻を押さえながらなんとか試験を終えました。

 

 あれから37年、花粉症の治療も大きく変わりました。2014年からは「シダトレン」が発売され、スギ花粉症に対する減感作療法が始まりました。減感作療法とは、アレルゲン(アレルギーの原因物質)を低濃度から体内に取り込み、徐々に濃度を上げていって、慣れさせて過敏さを取ろうという治療方法です。

 

 「シダトレン」は舌下に薬液を垂らして行う減感作療法(舌下免疫療法)で、12歳以上が対象でしたが、18年には年齢制限なく小児が服薬できる錠剤として、「シダキュア」が発売され、舌下免疫療法が広く普及しました。

 

 それと時期をほぼ同じくして、私たち、小児消化器医のところには、嘔気や腹痛を訴えて受診し、好酸球性消化管疾患と診断される子が増えてきました。

 

 好酸球性消化管疾患とは、簡単に言うと「おなかのアレルギー」です。多くは食べ物が原因となり、おなかの症状以外に皮膚や呼吸などの症状がないことがほとんどです。そして、好酸球性消化管疾患と診断された子供たちの中に、「シダキュア」などの舌下免疫療法を行っていて、舌下免疫療法を中止することで症状が改善し、好酸球性消化管疾患の原因として舌下免疫療法が疑われたのです。

 

 「シダキュア」の添付文書には頻度が1%未満の副作用として好酸球性食道炎が記載されています。好酸球性食道炎は好酸球性消化管疾患の一つで、食道以外にもアレルギー反応が起こっていると、好酸球性胃炎、好酸球性胃腸炎、好酸球性腸炎などと呼び、これらをまとめて好酸球性消化管疾患と呼びます。

 

 まだ正確な頻度は不明でありますが、「シダキュア」などの舌下免疫療法を行っている最中に消化器症状がみられた場合には、好酸球性消化管疾患を疑って下さい。

 

(そごう・つよし 済生会横浜市東部病院小児肝臓消化器科副部長)

 

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