へその緒と尿膜管遺残

2022年0225 福祉新聞編集部
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 子供の頃、父から「へそのゴマがたまるとおなかの中にバイ菌が入る」と言われ、お風呂に入るとアカスリでへその穴をゴシゴシされたのを覚えています。一方で、「へそのゴマを取り過ぎると、おなかの中にバイ菌が入っちゃうよ」と母から言われたことがあります。

 

 へそのゴマの正体は、へそにたまったあかや皮脂などの汚れです。外来には時々「へそから膿のようなものが出てくる」「へそから臭い汁が出てくる」という訴えで受診する人がいます。本当にへそのゴマからおなかの中にバイ菌が入ったりするのでしょうか?

 

 お母さんのおなかの中にいるとき、胎児のへそには臍帯(へその緒)が存在し、胎盤を通して、お母さんとつながっています。臍帯の中には2本の臍動脈、尿膜管、臍静脈があり、へそと赤ちゃんのおなかの中をつないでいます。生まれてくると、それぞれ外側臍索、正中臍索、肝円索と呼ばれる索状の構造物となって萎縮して閉じてしまいます。そして、生まれてから約2週間で、臍帯が乾燥して剥がれ落ちると、周囲の筋膜がへそに向かって収縮して、へこんだへその形が作られます。

 

 赤ちゃんが、お母さんのおなかの中にいるときに、膀胱からへそにつながる管が尿膜管です。胎児の尿は尿膜管を通して母体へ流れます。通常、尿膜管は、出生すると消えてしまいますが、出生以降も尿膜管が残存している病態が尿膜管遺残です。成人の2%に尿膜管遺残があると言われています。

 

 尿膜管遺残に細菌が感染した場合に、「へそから膿のようなものが出てくる」「臭い汁が出てくる」というような臍炎と呼ばれる、へその炎症を起こします。臍炎になるとへそが痛み、膿が出ます。炎症がさらに強くなると発熱したり、へそが赤くおできのように腫れたり、強い腹痛を起こすことがあります。腹痛から尿膜管遺残が見つかる子もいます。尿膜管遺残は、超音波検査やCT検査で比較的簡単に診断できることが多いです。

 

 臍炎になると、抗菌薬による治療が必要です。膿の塊ができている場合には切開して、膿を排出する処置をします。高率に再発するため炎症を起こしている場合には、炎症が治まってから手術で尿膜管遺残を摘出するのが原則です。また、尿膜管遺残の0・17~0・34%に尿膜管がんが発生します。とても珍しいがんですが、発症すると予後が不良のため、尿膜管を見つけたら切除が勧められています。

 

 私が子供の頃、父からゴシゴシされたへそのゴマですが、基本的には放置しておいても問題となることはありません。ただし、汚れが目立ったり、気になったりする場合には、オリーブオイルなどをへそに垂らし、へそのゴマを軟らかくしてから優しく綿棒で取ってあげるのがよいと思います。

 

(そごう・つよし 済生会横浜市東部病院小児肝臓消化器科副部長)

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