高齢者の電動車いす、踏切事故多発 安全対策が課題に

2022年0310 福祉新聞編集部
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タイヤが線路の溝にはまるとなかなか抜け出せない

 電動車いすに乗った高齢者の踏切事故が相次いだ。2021年8月から12月までに3件の事故があり、2人が死亡した。運転免許証の返上で電動車いすが便利な移動手段として利用する高齢者が増加していることも一因のようで、安全対策が課題になっている。

 

 昨年12月9日に大阪府東大阪市の近鉄奈良線で、69歳の男性が普通電車と衝突して死亡。8月には香川県観音寺市のJR予讃線で75歳の女性が特急列車にはねられて亡くなったほか、11月には宮崎県門川町のJR日豊線で踏切内に立ち往生した80代の女性が、あわやのところで救出されるという事故も起きている。

 

 独立行政法人「製品評価技術基盤機構(NITE)」によると、電動車いすに乗った高齢者の踏切内での事故は11~20年度の10年間に、兵庫や愛知、福岡、山梨県などで13件発生。60~90代の9人が亡くなっている。タイヤが線路の溝にはまったり、バッテリーが切れて線路内に立ち往生、列車と衝突した事例も報告されている。

 

 電動車いすはバッテリーやモーターを積んでおり、手動式の車いすに比べて重い。その重量を支えるため、タイヤの幅が手動式に比べて太く、線路の隙間にはまると、なかなか抜け出せない。

 

 総務省が21年9月現在として発表した65歳以上の高齢者は推計3640万人で過去最多を更新している。高齢ドライバーによる死亡事故が相次いだこともあり、運転免許証を返上する高齢者が増えている。

 

 免許を返上した高齢者に電動車いす購入の補助金を出す自治体もある。岐阜県大野町は自主返納者支援事業として購入費の一部助成(上限5万円)を、鳥取県大山町は上限10万円で購入費の二分の一を補助している。

 

 電動車いす安全普及協会(静岡県浜松市)によると、20年度の出荷台数は約1万9400台。協会担当者は「利用は高齢者が多い。買い物や通院に自転車や徒歩ではつらいという人や、加齢により足腰が衰えてきた高齢の人が主に使っている」と話す。

 

 電動車いすはこれまでの福祉機器から高齢者の移動手段として、役割が大きく変わってきた。NITEの担当者は「介助者がいない場合や夜間の踏切横断は避けてほしい」と呼び掛けるが、地元自治体や警察署が中心になって、電動車いすの利用に関する講習会を定期的に開催するなど、安全対策の必要性が高まっていきそうだ。

 

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