医療保護入院、廃止も視野に縮小へ 「任意」や退院促す

2022年0330 福祉新聞編集部

 厚生労働省は3月16日、精神科病院に強制的に入院させる「医療保護入院」について、将来的な廃止も視野に入れ縮小する考えを同日の「地域で安心して暮らせる精神保健医療福祉体制の実現に向けた検討会」(座長=田辺国昭・国立社会保障・人口問題研究所長)に示した。

 

 入院後、6カ月ごとに医療保護入院の要件を満たすか確認することを病院に義務付け、本人が同意した「任意入院」や、退院につなげる。医療保護入院となった理由を患者に書面で告知することも病院に義務付ける。こうした手続きを法定化することで医療保護入院を減らす考えだ。

 

 委員からは賛同する意見や、退院促進に向けてより強い取り組みを求める意見が上がった。今後、検討を続けて5月に報告書をまとめ、精神保健福祉法の改正に臨む。

 

 医療保護入院患者のうち、希望する人に入院中の困りごとや不安な気持ちを傾聴する「意思表明支援者」(仮称)を派遣する仕組みも制度化を目指す。患者に退院請求の仕組みなど情報を提供し、患者が病院に意見する際の手助けをする。

 

 一部の先行例では「代弁者」「アドボケイト(権利擁護者)」などと呼ばれる。特定の資格保持を必須とはしないが、所定の研修を課す。実施主体は都道府県とし、登録された意思表明支援者は第三者の立場で活動する。

 

 医療保護入院の患者に限らず、隔離や身体拘束を減らすための処遇基準も見直す。入院中の虐待については、現在、障害者虐待防止法の通報義務の対象になっていないが、複数の委員が対象にするよう求めた。

 

 医療保護入院とは自傷他害のおそれはないものの、任意で入院する状態にない人を精神保健指定医の診察と患者の家族などの同意で強制的に入院させること。2018年度の届け出件数は18万7000件に上る。毎年6月30日時点の調査では、医療保護入院患者の約6割が1年以上の長期入院であることが分かっている。

 

福祉新聞の購読はこちら