一般雇用の障害者、就労系サービス併用に期限 原則3~6カ月〈厚労省案〉

2022年0418 福祉新聞編集部
都内のB型事業所で働き、夜は清掃会社に勤めるミヨさん(右)

 厚生労働省は8日、企業での一般就労を始めた障害者が就労系障害福祉サービスも利用する「併用」の期間について、原則3~6カ月、延長する場合でも合計1年間とする案を社会保障審議会障害者部会(座長=菊池馨実・早稲田大教授)に示した。

 

 現在はそもそも「併用」を想定していないため、それを禁じたり認めたりする規定がない。「併用」する人もいるが、その期間にルールはなく、市町村の判断に委ねられている。

 

 今後は企業に雇われている人も就労系障害福祉サービスの利用対象となることを法令に明記する方針。委員の多くは賛同し、「併用の期間は柔軟に決められるようにしてほしい」といった意見も上がった。

 

 厚労省は、通い慣れた就労系障害福祉サービス事業所で週に数日働きながら、それ以外の日に企業にも勤めて徐々に勤務時間を増やしたい人には「併用」が有効だとみる。

 

 雇用されるか福祉を利用するかの二者択一を本人に迫るのではなく、どちらも認めるが、一時的な措置と位置付ける。

 

 その間、企業と障害福祉事業所が本人への支援内容を共有することも必須とする。

 

 一方、企業勤めを休職した人が就労系障害福祉サービスを利用しながら復職を目指す場合は、就労移行支援サービスの標準利用期間の2年を「併用」の上限とする考えだ。

ルール化は一長一短

 こうしたルールが導入されると、堂々と「併用」できる人が増える一方、困る人も少なからず出てくる。

 

 「清掃の仕事一本にしたら? と周囲から言われるが、私には無理」

 

 都内の就労継続支援B型事業所(飲食店)で週に3日働く統合失調症のミヨさん(仮名・48)は打ち明ける。

 

 平日は毎晩2時間、ビル清掃の会社に雇用されて働く「併用」を重ねてきた。その期間は14年。勤務先には自分の障害やB型事業所に通っていることを伏せている。新ルールに照らせばアウトだ。

 

 「私は理解力が弱いので、頼れる人がそばにいてほしい。B型事業所に通うことが私のメンタルケアになっている。勤務先に私の障害のことを話すと今の良い環境が壊れる。それが怖い」と話す。

 

 精神障害者の場合、気分や体調の良し悪しに波がある。「一般就労した後、福祉の支援は一切不要」となる人ばかりではない。ミヨさんの通うB型事業所の職員は「そもそもなぜ併用がダメなのか分からない。障害特性に応じて自由にすればいいのに」と話している。

 

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