令和の渋沢栄一を養成 ふくし未来塾、初の合宿

2022年0425 福祉新聞編集部
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和やかな雰囲気で対話型の演習が行われた

 令和時代の渋沢栄一を養成する「ふくし未来塾」のゼミ演習が4月17日から、神奈川県葉山町のロフォス湘南で開催された。福祉保険サービスが主催し、全国社会福祉協議会が運営するもので、昨年10月に開講。これまでオンラインだけでつながってきた受講生は初めて顔を合わせ、3日間にわたり次世代の福祉経営やビジョンについて議論を重ねた。

危機感

 「制度の枠を超え、社会福祉法人が地域でどんな役割を果たすかがますます問われてくる」――。開会にあたり笹尾勝・全社協常務理事はこう呼び掛けた。

 

 合宿には33人が参加。分野も高齢・障害・児童・社協とバラバラだが30~40代が多い。施設長や事務局長級が約4割で「いわゆる創業一族は半数ほど」(全社協)という。

 

 立ち上げの背景には福祉事業の硬直化への危機感がある。

 

 2000年以降、福祉事業に株式会社が参入し、社会福祉法人の存在感が低下。並行して人口減少や孤立など複合的な地域課題への対応も迫られる。

 

 笹尾常務はそうした社会構造の変化を説明し「平成と異なり、令和時代は法人自ら変化しなければ未来はない。時代の転換期への危機意識を持ってほしい」と訴えた。

緊張感

 演習は対話を重視し、5グループに分かれて進行。スーパーバイザーは山下興一郎・ふくし未来塾教授と芹澤高斉・淑徳大教授が務め、全国社会福祉法人経営青年会のメンバーも参加した。

 

 受講者は事前に準備した自法人の経営分析と次世代の公益事業について発表。終始和やかな雰囲気で、時折笑い声も起きた。

 

 そんな空気が一転し、緊張感が漂ったのが2日目の全体演習だ。

 

 受講者の中から、東京都内で保育所など13事業を運営する社会福祉法人未来こどもランドの栗原三津子理事長が公益事業として行うカフェの方向性について課題を提起した。

 

 これに対し山下教授が「誰が来てどんな場を目指すのか」「なぜ常設カフェか」「地域住民とは誰か」などとテンポよく質問。受講生にも「栗原さんの考えはどうか」などと攻め続けた。

 

 演習後、栗原さんは「最初は進行の速度に戸惑ったが、結果的に自らの姿勢や行動を再確認するいい機会になった」と話した。

育ち合う文化

 合宿は異業種の経営者が講師に招かれたのも特徴だ。

 

 大里綜合管理の野老真理子会長は、いわゆる「街の不動産屋」だが、並行して地域活動を実施。学童保育や清掃、団塊の世代が先生の塾、主婦の日替わりレストランなど300事業を超える。

 

 野老会長は地域活動の立ち上げには住民の声に気づく力が大切と説明した。一方、本業からの持ち出しはなく「我々は福祉はやらない」と強調。結果的に会社の求人や広告の支出はゼロという。

 

 受講生からは「理念をどう伝えるか」「活動資金はどう捻出するか」などの質問が相次いだ。

 

 合宿で受講生が問われたのは徹底的な「自己覚知」だ。自らの実践を掘り下げ、考えの根拠を見つめ直す。そこから分析対象を法人や地域に広げ、言語化する作業を重ねた。狙いについて山下教授は「公益を追求するための意識改革に向け、育ち合う文化を作りたかった」と話す。

 

 今後、受講生は修了論文に着手する。優秀者は10月の国際福祉機器展のセミナーで発表する。ただ「大学院を超えるレベルが必要」(全社協)として、未修了者が出る可能性もあるという。

 

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