銀杏の食べ過ぎに注意

2022年0520 福祉新聞編集部
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 2011年3月11日に東日本大震災があった日、私は病院で当直でした。夕飯を買いに院内のコンビニエンスストアに行くと、店内の食料はほぼなくなっていました。病院の前を通る国道1号線は大渋滞で、食料を補充するトラックも来れません。家に7歳と3歳の子供2人と妻を残して当直をしながら、これが何日も続いたらどうなるのだろう?と不安になりました。

 

 幸いなことに翌日には渋滞も解消し、流通も徐々に回復しましたが、今後、同じような事態になったときに子供たちだけでも生きていけるような知恵を与えなければと思い、翌週の週末に裏山に山菜採りに出かけました。

 

 夕飯にはタラの芽、ノビル、ニワトコ等々、本を見ながら採ってきた山菜を天ぷらにして食べました。特に3歳の息子はニワトコを「おいしい」とたくさん食べたのです。

 

 その夜、息子が突然、嘔吐しました。妻から「変なものを食べさせるから!」と叱られたので、よく調べてみるとニワトコには青酸配糖体が含まれており、食べ過ぎると嘔吐や下痢などの中毒症状を起こすことがあるそうです。

 

 体の小さい息子が大人以上に食べてしまったために中毒症状が起こったようです。山菜にはニワトコやカタクリなど食べ過ぎると中毒症状を起こすものがありますが、実は私たちが日常的に食べている食材でも中毒症状を起こすことがあります。それは銀杏です。

 

 銀杏に含まれている4―メトキシピリドキシンという物質が、ビタミンB6の作用をブロックするため、一度に多く食べると、嘔吐、下痢、呼吸困難、けいれんなどのビタミンB6欠乏症と同じ症状が現れます。

 

 以前、私が当直をしているときに「子供がけいれんをした」と救急外来に男の子が連れて来られました。すでにけいれんは止まっており、男の子も元気であり、まったく症状はありませんでした。お母さんは直前に食べた銀杏が原因ではないかと心配していましたが、私は「もうけいれんも止まっているし、今は元気なので大丈夫」とそのまま帰宅させました。

 

 ところが、しばらくすると、「ネット調べたら、銀杏中毒というのがあった。うちの子もそれではないか?」と母親に連れられてその子がまた外来にやって来たのです。実は当時、私は銀杏中毒のことを知らず、気になって調べていたところに親御さんも気になって再度来院されたのでした。

 

 親御さんへは私の無知をおわびして、念のためにビタミンB6を注射することにしました。銀杏中毒は5歳未満の子の発症が多いと言われています。「銀杏は年の数以上に食べてはいけない」との言い伝えもあるようで、5~6個食べただけで中毒になることもあるようです。

 

(そごう・つよし 済生会横浜市東部病院小児肝臓消化器科部長)

 

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