非滞留性便失禁――便秘ないのに便漏れ

2022年0603 福祉新聞編集部
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 トイレトレーニングが完了する時期には個人差があります。一般的には4歳くらいまでにはトイレで排便、排尿ができるようになり、オムツからパンツで過ごすようになります。便秘症の子供はトイレで排便ができるようになるのが遅めで、4歳過ぎてもトイレで排便ができない子が少なくありません。普段はパンツをはいて過ごしているけれども、便意を催すと自分でオムツに履き替えて排便する子もいます。

 

 また、トイレで排便ができるのだけれども、知らぬ間にパンツの中で排便をしてしまったり、パンツがいつも便で汚れていたりする子もいます。便失禁の回数も入れると排便回数は少なくないため、便秘であることに気付かずに、便失禁または遺糞症として紹介されてくる子もいます。実は便失禁や遺糞症として紹介されてくる子供のほとんどは慢性機能性便秘症の診断基準に合致します。そして、便秘症の治療をしてあげることで、便失禁は改善します。

 

 しかし、たまに便秘ではないのに便を漏らしてしまうという子が紹介されてきます。問診や内科的診察、各種画像検査でも便がたまっている所見は見られないにもかかわらず、便を漏らしてしまうのです。このような場合、非滞留性便失禁(nonretentive fecal incontinence)と診断します。背景に発達障害や性的虐待が隠れていることが少なくないとも言われています。

 

 7歳の女の子が便失禁のため、私の外来に紹介されてきました。成長発達に特に異常は指摘されておらず、小学校入学前には便失禁はありませんでした。小学1年生の夏休み前頃から便がパンツに付着することが始まり、8月になると、大量に便が漏れても本人が気づかず、臭いで周りが気づくというような状態になったそうです。

 

 当初、便失禁は月に2、3回でしたが、受診した8月頃には週に5~6回便失禁がありました。放屁とともに漏れることが多かったのが、受診時は誘因なく漏れるようになっていました。トイレでの排便は小さな便がちぎれて出てくるようなのが2日に1回。おなかを触ると小さな固い便に触れますが、腹部単純レントゲン検査では便貯留は見られませんでした。

 

 排便状況と身体所見からは便秘の診断基準は満たさず、レントゲン像も合致しません。小学校入学以降に遺糞がみられるようになっていることより、小学校では授業中にトイレに行けない、朝起きてから登校までの時間が短いなど、排便我慢が遺糞症発症の契機になったと考えられました。少量の便秘薬と便意がなくても定期的にトイレに行って排便するようにしたところ、便失禁は見られなくなりました。

 

 便を漏らしてしまうことが続く場合には一度、小児科に相談してください。

 

(そごう・つよし 済生会横浜市東部病院小児肝臓消化器科部長)

 

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