日本海裂頭条虫――お尻から白いひも

2022年0610 福祉新聞編集部
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 子供たちが大好きな回転ずし、中でもサーモンは人気ランキングで常に上位にランクインするすしネタです。今回は子供たちも大好きなサーモンに関係するお話です。

 

 近隣の医療機関から「お尻から白いひものようなものが出てきて、引っ張ったらちぎれてしまった」と、女の子が紹介されてきました。紹介状には引きちぎられた白いひものようなものの分析結果も同封されており、その正体は日本海裂頭条虫という寄生虫でした。

 

 日本海裂頭条虫は、第1中間宿主であるケンミジンコの中でプロセルコイドとして生息しており、それを第2中間宿主であるサケ属の魚(サクラマス、カラフトマス)が食べると、食べた魚の中でプレロセルコイドへと発育します。最終的にプレロセルコイドが寄生した魚を人間が食べると感染し、成虫へと発育します。

 

 人間に感染した後、小腸上部に寄生し、1日に5~10センチずつ発育し、約1カ月で成熟して卵を産み、成虫は5~10メートルにもなります。日本海裂頭条虫は、腸管以外の臓器へ侵入することはありません。症状は、腹部の不快感、下痢、食欲不振を自覚する程度で、排便時に虫体の一部が排出されて始めて感染に気づくことが多いと言われています。

 

 日本産のマスの13~56%がプレロセルコイドに感染していたとの報告があります。ここまで読まれて「サーモンってサケじゃないの?」と思われた方、日本で広く〝サーモン〟と言われているものは主にトラウトサーモンと呼ばれる魚です。トラウトとは英語でマスのことです。私たちの病院に紹介されてきた子も回転ずしでサーモンをよく食べていたとのことでした。日本海裂頭条虫は、その形状が真田紐という日本古来の平たいひもに似ていることから〝サナダムシ〟とも呼ばれます。

 

 昭和40年代以降、日本では低温流通ネットワークが発達し、新鮮な魚介類が届くようになりました。その結果、サケ・マス類に寄生しているプレロセルコイドも新鮮な状態で食卓に上がるようになり、一時期、日本海裂頭条虫の報告が増えました。プレロセルコイドは、56℃以上の加熱、またはマイナス20℃以下24時間以上の冷凍保存で死滅すると言われており、冷凍保存されて流通した魚では感染の心配はありませんが、冷蔵(5~10℃)やチルド(マイナス5~5℃)で輸送された魚は感染のリスクがあります。

 

 治療はプラジカンテルという駆虫薬を内服しますが、私たちの症例では、アミドトリゾ酸ナトリウムメグルミン(商品名ガストログラフィン)という消化管造影剤を小腸に注入して、診断と治療を同時に行いました。造影剤が虫体のいる部分に到達すると、動いている姿が観察でき、やがて動かなくなると造影剤とともに排せつされました。長さは約2メートルでした。

 

(そごう・つよし 済生会横浜市東部病院小児肝臓消化器科部長)

 

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