マスク熱中症より怖い窒息

2022年0624 福祉新聞編集部
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 最近、「マスク熱中症」という言葉をよく聞きます。新型コロナウイルス流行のため、マスクを着けていることで熱中症になるのではないかという不安から生まれた言葉ではないかと思います。6月10日に大阪府の小学校で児童17人が体育の授業後、体調不良を訴え、うち1人が救急搬送されるという報道がありました。体育の授業中にマスクを外す指示がされていなかったということもあり、「マスクによる熱中症」として報道されました。本当にマスク熱中症は存在するのでしょうか?

 

 熱中症は外部環境から受ける熱(太陽からの放射熱、地面からの照り返しなど)と自分の体が作る熱の影響で、体温を正常に維持できなくなった結果起こります。人間が体から熱を逃がすには皮膚から熱を放散させる、汗が蒸発する際の気化熱、空気の流れ(対流)、直接冷たいものを体に当てて体を冷やす(伝導)などがあります。

 

 マスクを着用することにより熱の放散、対流汗の蒸発が影響を受けると考えられます。マスクで覆われた部分から熱が逃げにくくなるのではという心配です。これは専門家が計算した結果もありますが、体全体からするとごくわずかであり、影響は限定的と考えられます。また、呼気からも大気中へ熱を逃がす経路として考えられますが、こちらも人間においては限定的であることが分かっています。

 

 では、なぜ、大阪府の小学校で事故は起こったのでしょうか。考えられることは幾つかあります。最初にWBGT(暑さ指数)を現場で測定して運動の可否を判断することや、塩分の含まれた水分を子供たちが飲みたいときに飲みたいだけ飲ませるなどの基本的な熱中症の対策が実施されていなかった可能性です。

 

 次に熱中症ではなかった可能性です。熱い環境にいる、もしくはいた後の体調不良は熱中症と考えるのが原則です。したがって、他の原因の体調不良が紛れ込む可能性があります。

 

 今回、考えられるのは「マスク窒息」です。オミクロン株流行以降、学校現場では感染予防の観点から不織布マスクの着用を推奨しています。しかし、不織布マスクを着けたまま運動をすると、汗で濡れたマスクで口と鼻を覆うことになります。汗の量にもよりますが、大量の汗は不織布マスクの空気の通り道をふさいでしまい、窒息の原因になります。このことは文部科学省も以前から警告を出しており、体育の授業でマスクを着けなくてもよいと通達を出していました。

 

 最後に熱中症であったとすると、マスクで呼吸しづらいことにより、呼吸に必要なエネルギーが通常より増加します。そのことにより、体での熱産生が増加したことによる影響はあると考えられます。

 

 いずれにせよ、もしも、運動中にマスクを着用させるのであれば、感染予防効果は落ちますが、スポーツ用マスクなどの不織布以外の素材のマスクを使用するべきです。

 

(そごう・つよし 済生会横浜市東部病院小児肝臓消化器科部長)

 

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