ピアスタッフが回復モデルに 依存症に専門チームで寄り添う救護施設

2022年0726 福祉新聞編集部
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同じ境遇の利用者同士で話せる場があることが回復への第一歩になる

 社会福祉法人大阪婦人ホーム(石田易司理事長)の女性専用救護施設「ホーリーホーム」(定員90人)。赤い羽根福祉基金の助成事業を活用して依存症者・暴力被害者の受け入れ・支援・地域移行に力を入れている。

 

 大阪市東南部の町工場が建ち並ぶ一角にあるホーリーホームは、1907年創設の最も古い女性専用救護施設。全国180カ所の救護施設のうち、同ホームを含めても全国に5カ所しか存在しない。

 

 助成事業以前から、利用者に依存症者や暴力被害に遭った人はいたが、その過酷な経験が入所後の「問題行動」に発展するケースもあり、その都度職員は対応に苦慮。適切な支援策を模索していた。

 

 福越直子施設長は「女性依存症者には暴力などの被害体験者が多い。それまで他の利用者と同じ支援内容だったのを、チームで専門的に行うことにしました」と話す。

ピアスタッフ雇用

 依存症利用者の「よりどころ」になればと同じ経験を持つ人を専任のピアスタッフとして雇用した。暴力被害経験のある利用者にも対応するためのカウンセラーも配置。一般職員も含めてチームを組み、支援プログラムを提供した。

 

 その一つが、依存症ミーティングと暴力被害者ミーティングだ。依存症は多い時で約15人、暴力被害は3人ほどが参加。毎月2回ずつ開催し、ピアスタッフも参加して、自分の体験や気持ちを話すというもの。

 

 以前までは、「飲酒したい気持ちすら職員になかなか打ち明けてもらえませんでした」(福越施設長)。ミーティングの実施やピアスタッフがホーム内にいることで、「心を開く利用者が増え、行動も落ち着きました。ピアスタッフの姿が身近な回復モデルとなっています」と話す。

つながりが重要

 自身もアルコール依存症の女性2人が、ピアスタッフ募集の話を聞くなどして配置基準外の契約職員として入職した。

 

 職員のうち1人は「過酷な経験をしてきたからこそ、同じ境遇の利用者同士で安心して話をする場や、カウンセラー、職員が丁寧に支援する体制があることが、回復していく上で必須です」と話す。

 

 昨年度はチームで支援した13人が地域移行したが、全員が順調に地域生活を送れるわけではない。アルコール依存症の場合、退所後に飲酒が止まらなくなり、職員が入院に付き添うことも。

 

 「うまくいかなくなった時にも頼ってもらえるよう、つながりを持ち続けることが重要です」

 

 このピアスタッフ2人は、今は正規職員となり、ホームに欠かせない存在になっている。

 

 このほか、1泊から利用できる地域移行練習用マンションを2室借りた。3年間の助成額は、賃貸料やカウンセリングルーム整備費用など総額1421万2747円だった。

他施設に訪問検討

 今後の課題を福越施設長は「コロナの影響で不十分だった外部とのつながりをつくっていきたい」と話す。

 

 回復者がホームに来て、利用者に話をする場をつくったり、利用者や退所者が別の施設に話をしに行く機会をつくったりする。

 

 3年間の支援したケースをまとめ、全国の救護施設などに配布した。「女性支援に私たちの経験が役立てば」と福越施設長は話す。

 

 大阪婦人ホーム=1907年に林歌子を中心とするキリスト教婦人矯風会大阪支部が、農村から仕事を求めて来阪する女性保護を目的に創設。2007年、法人設立100周年を機に、施設名を現在のホーリーホームに改称した。救護施設だけでなく保育所や、障害児通所事業などに取り組む。

 

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