ポジショニング基本の「キ」

2022年0729 福祉新聞編集部

 皆さんはポジショニングを行う際に、どのようなことを意識しているでしょうか。

 

 ポジショニングは「何となく、良さそうだから」といった感覚で実施するのではなく、目的を明確にした上での実施が望まれます。今回はポジショニングの目的や実施の流れについての大枠をお伝えします。

 

 ポジショニングにはさまざまな効果が期待できます。褥瘡予防や関節拘縮予防だけでなく、過度な筋緊張が抑えられたり、それにより呼吸機能や嚥下機能の改善につながることも期待できます。また、適切なポジショニングは起立や食事などの動作の安定性向上、痛みの減少を図ることもでき、結果として、各動作や生活の質の向上が期待できます。

 

 一方で、不良な姿勢や不快な姿勢は、身体に筋緊張のアンバランスを生み、関節拘縮や変形の助長、動作の不安定性などを引き起こす恐れがあります。

 

 一つ例を挙げてみます。脳卒中の患者で、座位姿勢から立ち上がる際に、麻痺側に倒れ込むようにバランスを崩されてしまう方を見かけたことはあるでしょうか。こういった方の場合、そもそもの座位姿勢を観察すると、立ち上がる前から身体は麻痺側に傾いていることがよく見られます。

 

 このように座位姿勢での傾きがその後の動作により強く出てしまうことがあります。身体が傾くということは全身の筋緊張がアンバランスな状態であり、さまざまな動作の不安定性につながってしまいます。日ごろから不良姿勢の場合には、その状態が定着している可能性があります。ポジショニングはその負のスパイラルを断つ役目があり、意識すれば誰にでも実施できる効果的なアプローチの一つになります。

 

 では、効果的なポジショニングは何から始めれば良いのでしょうか。以下の点を参考にしてみください。

目的を明確にする

 関節拘縮や褥瘡を予防したいのか、安定した臥位姿勢、もしくは座位姿勢につなげたいのか、などにより、ポジショニングのポイントも変わります。

姿勢を観察する

 例として、安定した臥位姿勢につなげたい場合を挙げてみます。

 

 ベッドで寝ている姿勢を観察すると、どこかこわばっているような身体の部位はありませんか。このような場合は、まずは身体の接地している面積を広くしてみましょう。膝が伸びない場合には膝下にクッションを入れてみてください。

 

 背骨が曲がって仰臥ぎょうが位(あおむけ)が取れない人には、側臥位(横向き)で背中や身体前面にクッションを入れてみてください。身体のよりどころが分かることで不必要に体を固める(緊張させる)必要がなくなります。

効果を検証する

 関節拘縮予防が目的であれば、一定期間を経ても関節の柔軟性が維持できていれば大成功です。

 

 安定した姿勢を提供することが目的であれば、ポジショニング後に筋緊張が緩み、リラックスできていれば適切なポジショニングができていると思われます。

 

 ポジショニングは実施して終わりではなく、ポジショニングをして何がどう変化したかをしっかりと観察することが大切です。次回はポジショニングと褥瘡について触れます。

 

筆者=宇都宮リハビリテーション病院 主任 高橋佳希

監修=稲川利光 令和健康科学大学リハビリテーション学部長。カマチグループ関東本部リハビリテーション統括本部長。

 

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