虐待予防でモデル事業 多機能化促進で新たな保育所像を模索〈こども家庭庁〉

2022年0913 福祉新聞編集部

 2023年4月に発足するこども家庭庁は来年度から、保育所が育児不安を抱える家庭などに対して相談支援のモデル事業を実施する。保育所が市町村とも連携するなど虐待の予防に向けた取り組みを強化。待機児童が減る中、多機能化を進めることで、新たな保育所像を模索する。

多機能化

 「保育所のノウハウを生かせるよう地域の子育て支援など多機能化を進めていく」――。8月30日の会見で今後の保育政策を問われた加藤勝信・厚生労働大臣はこう強調した。

 

 来年度のモデル事業では、定員に空きのある保育所や認定こども園などが、保育所などに通っていない未就園児を週1~2日程度、定期的に受け入れる。また、保護者と定期面談も行う。

 

 理由を問わず在園児以外を受け入れる「一時預かり」とは異なり、保護者や子どもと継続的に関わることがポイントになるという。

 

 取り組みの中で、育児不安や孤立、貧困など課題を抱える家庭がいれば、保育所が市町村や関係機関と連携。定期的に打ち合わせしながら支援計画も作る。

 

 モデル事業は全国30カ所を予定。実施主体は市町村で、費用は国が全額負担する。

 

 補助単価は、1施設当たり定期的な預かりが708万円。さらに、要支援家庭を支援すると378万円の加算がつき、最大1086万円を想定している。

 

 厚労省によると全国の未就園児は約182万人で、うち2歳以下が97%を占めるという。

重要なインフラ

 モデル事業は、保育所が地域の子育て家庭をサポートし、虐待予防の役割を担う多機能化が狙いだ。

 

 民間調査でも「悩みを話せる人がほしい」などと答えた保護者が5割を超える結果が出ており、支援ニーズは高いとみている。

 

 また虐待死した子どものうち、2歳以下が6割を超えているのが現状。厚労省はこうした未就園児の家庭のサポートが虐待予防のカギになるとみている。

 

 一方、背景には待機児童の減少もある。今年4月時点で全国の待機児童は2944人と過去最少に。すでに全国の市区町村の約9割で待機児童はおらず保育所の倒産や統廃合も起きている。

 

 そのため保育政策は岐路を迎えており、現場の危機感も強い。

 

 保育三団体協議会は今年6月、政府に対して地域で保育の場を確保する施策を要望。すでに経営困難な保育所もあるとして「保育機能が無くなれば、地域の消滅につながる」と訴えた。

 

 厚労省子ども家庭局は「保育所は地域で子育て家庭を支えるインフラとして非常に重要だ。モデル事業で保育所による要支援家庭への関わり方などを具体的に検討できれば」としている。

 

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