保育所の屋上に避難タワー 災害時は地域住民に開放(徳島)

2022年1117 福祉新聞編集部
屋上に設置された避難タワー

 11月5日は国連が定めた「世界津波の日」。南海トラフ地震に備え、屋上に津波避難タワーを設置した徳島県北島町の「みどり保育園」(社会福祉法人友愛福祉会、定員70人)は災害時にタワーを近隣の高齢者や障害者に開放することで地域の防災力向上に一役買っている。

 

 南海トラフ地震で同県では死者3万1300人、全壊11万6400棟となる被害想定をしている。紀伊水道に流れ込む河口からおよそ3・6キロに位置する同保育園は2つの川に挟まれた団地内にある。津波で浸水する深さは最大で1・3メートルと想定されているほか、沼地を埋め立てた場所にあることから液状化のリスクも高い。

 

 被災時に園児を誘導しながら、近くの消防署や高台にあるバイパス道路に避難するのは現実的ではなく、同園では垂直避難が最も安全性が高い。板東智昭副園長は「浸水想定はあくまでシミュレーション。何かあってからでは遅い。念には念を」と話しており、2013年に避難タワーを完成させた。

 

 園舎は鉄筋コンクリート2階建てで、屋上までおよそ7メートルある。この屋上に高さ3メートルの鉄骨のタワーを整備した。タワーの延べ床面積が43平方メートルで収容人数は約100人。総工費は420万円で全額法人が負担した。

 

 タワーの下には備蓄用倉庫も設置。園児と職員を合わせた計約100人の3日分の水や非常食のほか、ガス発電機、資機材、紙おむつなども配備している。

 

 地域の社会資源として、地元住民を含めて人的被害を減らすことも大きなテーマだ。北島町は入り組んだ団地が多い上に近隣では高齢化も進む。当初から大規模災害時での受け入れを想定し、板東豊昭園長は地元自治会長や老人会が園を訪れたタイミングで、避難タワーの存在を周知してきた。

 

 これまでは幸いにも大災害に見舞われておらず、近所の高齢者1人の利用にとどまっている。板東園長は「大規模災害はいつ起こるか分からない。(地域住民に)一層の周知を図りたい。合同で避難訓練を実施するなど方策を模索していきたい」と気を引き締めている。

 

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