排せつを「姿勢から」考える

2022年1125 福祉新聞編集部

 今回は姿勢による排便への影響についてお話しします。

 

 排便には、(1)大腸のぜん動運動(2)直腸への「重力」(3)「いきみ」「踏ん張り」が必要です。「いきみ」は呼吸筋によるもので、「踏ん張り」は腹筋によるものです。仰臥位や背もたれにもたれた座位では、呼吸筋や腹筋の働きが低下し、「いきみ」が弱くなり、「踏ん張る」力も出ません。強くいきんで踏ん張るには、足部を床に着けて座位を安定させる必要があります。排せつにはこれら「重力」「いきみ」「踏ん張り」の三つの力の方向軸が一致して直腸に作用する必要があります。 

 

 このような座位姿勢をとるには、トイレやポータブル便器の高さ、座面(便座)の角度、大きさ、形状、アームサポート(肘かけ)などが影響します。高さは足がしっかり床に着くようにします。

 

 余談ですが、上記の三つの力が有効に働くシーティングを考えると、ロダンの「考える人」の像が目に浮かびます。あの姿勢は排せつのために有効な姿勢であり、ロダンさんには悪いと思いますが、「排せつする人」の像として参考になるのではないでしょうか。

 

 「地に足を着けて」座ることは、以前お話しした食事の場面と同様に排せつの場面でも重要です。

 

 排せつには、座るということが必須条件であり、仰臥位では、いきみを加えてもその圧の方向と肛門管との軸にずれが生じます。直腸と肛門がつくる角度を「直腸肛門角」と言います。

 

腹圧の方向と肛門管

 

 寝ている状態と座っている状態では、直腸肛門角が変化します。座位の場合でも、体が前傾した姿勢と、背もたれにもたれた姿勢では直腸肛門角の角度が変化します。背もたれにもたれた座位姿勢では直腸肛門角が120度程度ですが、さらに前傾すれば便の移動する方向と重力方向が一致して排便しやすくなります。

 

 立ち上がりや車いすなどへの移乗との兼ね合いで、便座の高さをあまり低く設定できない場合は、排せつ時に足台などを使用する方法も有効です。

 

筆者=稲川利光 令和健康科学大学リハビリテーション学部長。カマチグループ関東本部リハビリテーション統括本部長。

 

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