救護施設が一時避難の女性ら受け入れ「今困っている人を帰していいのか」

2022年1130 福祉新聞編集部
一時避難に利用する住居。73世帯を受け入れた

 社会福祉法人大阪自彊館(川端均理事長)の救護施設「白雲寮」。赤い羽根福祉基金の助成事業を活用し、住居に不安のある女性らを対象にした「緊急一時避難事業」を強化した。

 

 日雇い労働者の多い大阪市西成区にある大阪自彊館。1912年の法人創設から生活困窮者支援と向き合い、現在は7カ所の救護施設を大阪と滋賀で運営している。中でも67年に開設した白雲寮は、同法人で最も古い救護施設だ。

 

 白雲寮で緊急一時避難事業を始めたのは、助成事業が始まる前の2017年4月1日から。それまでも、警察などからの依頼でホームレスなど住居に不安のある人を一時的に受け入れる「緊急宿泊」を実施している。

 

 一方で、「その日に食べるものがない」「寝る場所がない」女性や家族を緊急保護し、継続支援する施設が法人にはないのが課題だったが、川端理事長の「今困っている人を帰していいのか」という思いが事業のきっかけとなった。

 

 一時避難場所として、法人所有の事業用事務所を活用したのに加え、1K(家賃4万5000円)と2DK(同5万円)のアパートの一室を借り上げた。助成事業の期間中(3年間)は、これらの家賃や光熱費、人件費などに助成金約1900万円を充てた。

 

 対象者を女性の単身者や家族(母子、父子含む)に限定したのも特徴だ。担当の難波雅樹さんは「西成は単身男性向けシェルターなどに比べ、単身女性や家族向けのものはごくわずかだった」と説明する。

 

 市の窓口を訪れた対象者とその日のうちの面談を心掛けた。利用時のルールを説明。同意があれば支援を開始するのが主な流れだ。

 

 もう1人の担当者、飯國猛さんが支援ケースを話してくれた。「コロナ禍で解雇され、九州から車でやってきた60歳代の女性は、地元で生活保護や貸し付けなどをすべて断られた。自殺も考えたが思いとどまり、最後の頼みと西成の地域包括支援センターにたまたま飛び込んだことで、当法人とつながることができました」。

 

 「外国籍の母子はDV被害に遭った。翻訳アプリを活用しながら離婚や定住権取得、就職など、専門機関と協力して支援に当たりました」。

 

 利用者には食材を用意。被服費や仕事先への交通費などが必要であれば、1日500~1000円で一緒に生活設計を組み立てた。診療、治療相談などにも応じた。

 

 その結果、助成期間に単身女性、家族、母子・父子合わせて73世帯(104人)を受け入れることができた。

 

 助成終了後も、法人事業として継続している。難波さんは「生活破綻の手前で踏みとどまるための支援ができたのでは」と評価する。

 

 一方、飯國さんは「支援終了後に当法人が運営するこども食堂につながるケースも一部あるが、伴走型支援につながっていない人のフォローをどうするかが今後の課題です」と話している。

 

 大阪自彊館=1912年、中村三徳氏によって創設。法人理念である「自彊不息」から大阪自彊館と名付けられた。西成・釜ケ崎で社会情勢が目まぐるしく変わる中、慈善事業から始まり、社会のニーズに応じた困窮する単身、家族支援事業を展開している。

 

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