離職率が高い児童養護施設出身者 キャリア教育支援団体が報告会

2023年0113 福祉新聞編集部
永岡代表理事

 社会的養護出身者の就職支援などを行うNPO法人フェアスタートサポート(永岡鉄平代表理事)は12月9日、都内で事業報告会を開催した。

 

 同法人は2021年12月から、社会的養護のこどもたちへの就労支援に協力的な民間企業を、児童養護施設などへ紹介するマッチングサイト「フェアスタートパートナー」を開始。企業の紹介とともに、職場見学や仕事体験など、企業が提供できるキャリア教育の内容を掲載している。

 

 報告会で永岡代表理事は、この1年で掲載企業が151社に上ったと説明。このうち、44施設が48社と実際に交流した。内訳は、企業を見学したのが116人、仕事の体験をしたのが26人、実際に就職につながったのが7人だった。

 

 永岡代表理事は「能力や特性は関係ない。本人の持つ強みをマッチングできれば、誰にでも活躍できる社会の居場所がある」と強調。「今後も全国の施設と企業がパートナー関係を築けるようなネットワークを張り巡らせたい」と語った。

 

 報告会ではサービスを活用した施設職員やこどもへのインタビュー映像も放映した。

 

 聖母愛児園(横浜市)の前田彩さんは「実際に働く場面を見に行くことで、こどもが働くことへのイメージをしやすくなった」と評価。川崎愛児園の山路憂真さんも「18歳で世の中の仕事を幅広く知る機会は少ない。早い段階でいろいろな人の協力を得ながら、自ら選択することが大切」などと語った。

 

 また、実際に会社見学に行ったこどもからは「自分の進路の幅を広げるきっかけになった」「一つの職種でも裏ではいろんな仕事があることが分かった」などの声が出た。

 

 東京都などの調査によると、児童養護施設を退所して就職した人のうち1年以内に離職するのは半数で、一般家庭のケースと比べると2倍ほど高い。

 

 同法人はこうした問題の解決には人生を考えるキャリア教育が必要と分析。早い段階から多様な大人のロールモデルに触れることで、さまざまな価値観を吸収できる機会をつくりたいという。

 

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