障害者施設が蚕を飼育 企業と連携で地域活性化(愛媛県)

2023年0125 福祉新聞編集部
ふんを掃除して蚕の育つ環境を整備する利用者=来島会提供

 愛媛県今治市の社会福祉法人来島会(越智清仁理事長)は、昨年10月から障害者が養蚕業を始めた。障害者の活躍の場をつくるため、県のシルク産業を発展させたいユナイテッドシルク社と連携することで実現した。地域産業の活性化につながる取り組みとしても期待されている。

 

 来島会の「だんだんファーム」の土地の一部と建物を提供し、同社が工場「せとうちシルクファクトリー」を建てた。工場は蚕の飼育からシルクの原料の抽出、加工まで一連の作業ができる国内でも有数の設備を備え、繭は年1トンの生産が見込める。

 

 蚕は卵から約1カ月で繭になり、工場では最大で約2万5000頭の蚕を飼育できる。現在、来島会は蚕の飼育の業務委託を受け、6人の障害者が作業している。温湿度などを管理して季節を問わず蚕を飼育できる設備を使い、餌やり、ふんの掃除、成長の確認などを行う。繭になったものを集め、繭の上部を切り取ってサナギを取り出す作業にも携わっている。

 

 初めは繭を見て抵抗する人がいたり、障害者が分かりやすい作業工程を確立するのに苦労したりしたが、少しすると慣れ、今は不安もなくなった。来島会職員の矢野正和さんは「利用者が安定して作業できる環境をつくりたい。スキルアップにつなげたい」と言う。

 

 シルクはバイオマテリアル(生体材料)として食品、化粧品、医療などへの活用や研究が進められている。同社執行役員の清谷啓仁さんは「障害者に先進的な産業に従事してもらい、働く喜びを感じ、高い収入を得られるモデルになるよう貢献していきたい」と意気込みを見せている。

 

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