精神障害者の結婚、子育ても応援を 横浜で家族会が市民講座

2023年0209 福祉新聞編集部
自身の経験を語る水月さん(右)と横山教授(左)

 精神障害者が結婚、出産、子育てすることを応援する社会にしようと、横浜市精神障害者家族連合会(宮川玲子理事長)が1月21日、結婚してこどものいる精神障害者の体験談を聞く市民講座を市内で開いた。

 

 政府が「異次元の少子化対策」「孤独・孤立対策」を進めるならば、精神障害者がその希望により結婚し、こどもを生んで育てることも当然と思える社会にするべきではないか、と投げ掛けた。

こどもが可哀そう?

 「精神病のくせにこどもを生もうなんてばかげている。こどもがかわいそうだ。堕胎しなさい」。双極性障害の水月琉凪さん(46・東京)は20年前、妊娠して初めて行った精神科でこう告げられた。

 

 当時は故郷から遠く離れた街で夫と暮らし、不安に押しつぶされそうだったが、男の子を出産した。しかし、ママ友の輪に入れず育児情報は皆無。孤立無援の子育てに限界を感じ、息子の中学進学を機に東京の実家に戻った。

オンラインサロンでピアサポート

 「東京では同じような境遇の人が集う自助会に参加し、経験を分かち合える素晴らしさを知った」と水月さん。2019年夏、自らオンラインサロン「ゆらいく」を立ち上げた。月1回20人前後が参加する。男性も含め、これまでの参加者は600人超に上る。

 

 「誰ともつながりを持てず苦しんでいる人がまだいるかもしれない。不調を抱えながらも子育てする人のピアサポートグループを全国に広げたい」

 

 この日の講座で横山惠子・横浜創英大教授(看護学)は水月さんの活動を高く評価し、「精神障害者で配偶者がいる人の割合は国民全体と比べて低く、孤立しながら子育てする人もいる。周囲の理解とサポートが不可欠だ」と話した。

不妊強要は不適切

 障害者の結婚や出産をめぐり、ここにきて国も動き出した。

 

 結婚する障害者に不妊処置を求めた福祉施設の問題が昨年末に報道されたことを受け、厚生労働省は1月20日、「不妊処置の強要はあってはならない」とし、そうした事案を把握したら厚労省に報告するよう全国の自治体に事務連絡した。

 

 加藤勝信・厚労大臣は23日の会見で「障害者とこどもを支えるため障害福祉、母子保健、児童福祉の連携体制を充実し、適切な支援を行うよう全国の自治体にお願いした」とした上で、「障害者の結婚、妊娠、出産、子育てについて現場の実態や好事例を把握し研究を進めることについて23年度に検討していきたい」と語った。

孤独・孤立に対策法

 孤独・孤立対策を進めるための法案も今年3月に国会に提出される見通しだ。基本理念は「社会のあらゆる分野において孤独・孤立対策の推進を図ること」とし、内閣府に推進本部を置く。地方自治体には関係機関による協議会を置くよう努力義務を課す。

 

 岸田文雄首相は23日の施政方針演説で「孤独や孤立に寄り添える社会を目指す」と語った。

 

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