救護施設利用者が語り合う「スッキリさわやかトーク」 人間関係改善に一役

2023年0315 福祉新聞編集部
SST研修を受けた職員の司会で課題を話し合った

 北海道の帯広太陽福祉会が運営する救護施設「東明寮」。赤い羽根福祉基金の助成事業で、社会生活を送る上での課題を利用者同士が話し合って解決する「スッキリさわやかトーク事業」を始めた。特に施設退所後に地域で暮らす人にとって、金銭管理や職場の人間関係改善に一役買っている。3年間の成果を聞いた。

退所後見据えた事業

 施設のある帯広市大正町は、市の中心部から15キロほど南に離れており、1988年に市から「ノーマライゼーション推進地区」の一つに指定された地域。東明寮のほかに、障害者入所支援施設やグループホーム(GH)など4法人・7施設が点在する。人口3000人ほどの小さなまちだ。

 

 スッキリさわやかトーク事業は、発達障害などがある人が対人スキルを学ぶ「ソーシャルスキルトレーニング」の頭文字・SSTをもじって同施設が独自に始めた。

 

 小野祐介支援課長補佐は「利用者は退所後を見据え、すでに退所した通所者は安定した社会生活を継続的に送れるよう導入した」と説明する。

 

 全国救護施設協議会が2019年度に行った調査によると、全国の救護施設利用者のおよそ7割に精神疾患、障害があるという。東明寮も約半数の利用者に精神障害がある。

 

 居宅生活訓練事業を経て地域移行したとしても、職場での人間関係がうまくいかないなど、必ずしも社会生活を円滑に送られるわけではない。

生活課題話し合う

 スッキリさわやかトーク事業の対象は、居宅生活訓練事業を行う施設利用者と退所後にGHで暮らす通所者。ある日の会合では、GHの6人に対して、司会を務める小野さんが日々の課題について解決したいことを聞いた。

 

 内容はさまざま。Aさんが「上司の顔色をうかがって声を掛けづらい」と言えば、Bさんは「忘れ物を多くしてしまう」。Cさんは「日常的な金銭管理が難しい」など。

 

 これに対して他の参加者が、「気にせず積極的にあいさつしてみては」「メモを取るといい」など助言を送る。その間、職員はできる限り見守る。

 

 1回当たり40分ほどで月2回の開催。もらった助言を参考に、その人がどのように対応したかを振り返り、新しい課題を話し合うというサイクルで毎回続ける。

 

 3年間の参加者は計13人。成果について小野さんは「課題解決だけでなく、日常生活のさまざまなコミュニケーションが円滑になった」と振り返る。GHで長年暮らす中、生活課題を互いにさらけ出すことで利用者同士の理解が深まってトラブルが減った。職員にも以前に比べて気軽に相談してくれるようにもなった。

 

 少なくとも8カ所ある道内の他の救護施設では、スッキリさわやかトーク事業のような取り組みは行われておらず、全国的にも定期的に取り組んでいる施設は珍しい。

 

 助成期間が終了した今年度も継続している。助成金は3年間で225万5865円。SSTを行うための職員研修費用などに活用した。

 

 東明寮=1949年に、帯広市が生活困窮者の一時収容施設として「愛泉館」を建設したのがはじまり。その後、更生施設を経て72年に市営の救護施設「東明寮」を開設。2000年に帯広太陽福祉会へ経営移譲された。現在、定員は90人。利用者の平均年齢は66・2歳。助成事業ではSSTのほかに地域の相談会なども開いた。

 

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