強度行動障害の支援人材、2層で育成 厚労省検討会が報告書

2023年0406 福祉新聞編集部

 自閉症や知的障害のある人の一部に見られる自傷行為などの「強度行動障害」をめぐり、厚生労働省は3月23日、支援に当たる人材を2層に分けて育成する方針を固めた。

 

 施設やグループホームに勤める職員のうち、所定の研修を受けた「中核的人材」が職場のリーダーになれるようにする。

 

 それとは別に、より高度な専門性を持つ「広域的支援人材(仮称)」を育てる。困難事例を抱えた施設に出向いて助言したり、その地域の支援体制づくりをリードしたりする人材として、都道府県単位で育成する。

 

 同日、「強度行動障害を有する者の地域支援体制に関する検討会」(座長=市川宏伸・日本発達障害ネットワーク理事長)の報告書案に盛り込み、大筋で了承された。2024年4月の障害報酬改定で具体化する。

集中的支援を広域でサポート

 在宅生活が難しくなった人を一時的に施設などで受け入れる「集中的支援」については、広域的支援人材がその受け入れ施設を訪問してサポートする。

 

 「集中的支援」が終わった後の受け入れ先も広域的支援人材がフォローする。障害者やその家族の状況を的確にアセスメント(客観的評価)すること、特定の施設だけで支えようとしないことを重視する。

 

 「集中的支援」は、日本知的障害者福祉協会(井上博会長)が研究事業の成果として22年6月に提案。最長で2年間受け入れる「行動障害生活支援センター(仮称)」を各都道府県に1カ所設けるよう求めていた。

 

 強度行動障害に対応できる人材の養成研修は、現在も国立のぞみの園(群馬県)が実施しているが、検討会はそれだけでは不十分だと判断。厚労省は今後、研修の拡充を検討する。

 

 強度行動障害は1980年代後半に生まれた概念で、障害の種類ではなく状態像を指す言葉だ。行動障害に関連した障害福祉サービスを利用する人は直近で延べ約6万9000人(児童を含む)。

 

 検討会では、強度行動障害という呼び方が正しい理解の妨げになったり、悪い印象を与えたりする恐れがあるとして、この用語の変更を検討するよう求める意見も挙がった。

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