〈社会福祉ヒーローズ〉「夢をかなえる介護」SNSで利用者の笑顔を発信

2023年0420 福祉新聞編集部
SNSでの発信に力を注いでいる

福住山ゆりの里 特養やまゆりの里(兵庫) 
主任生活相談員 稲葉夏輝さん

 

過疎地で職員不足に悩む施設のPRを任された稲葉さんは、SNSでの発信に力を注いだ。以前、兄が運営するデイサービスで働いていた時に「SNSの発信は利用者を深く知り、利用者を思う気持ちを共有でき、ケアの質の向上につながる」と実感したからだ。

 

「みんなが発信者大作戦」と題して、利用者との日常の関わりの中で撮った写真や動画をSNSにアップしようと職員に協力を求めたが、当初は受け入れてもらえなかった。フォロワー数も100人に満たず、心が折れそうになった。

 

そんな状況を一変する出来事が起きた。結婚式を挙げられなかった職員の結婚式を施設内で行い、利用者を含めてみんなが祝福した。この時の、涙を流して喜ぶ職員の様子を投稿するとフォロワー数が1000人も増えた。これを機にSNSの発信コンセプトが「夢をかなえる介護」に決まり、一気に発信が加速していった。

 

人気の畑作業シリーズでは、もう一度、畑仕事をしたい利用者の願いをかなえると、施設内では見たことのない満面の笑顔が見られる。料理をしてみんなを喜ばせたいという夢をかなえる料理シリーズも好評だ。旧友との再会や墓参りなど、職員は利用者の夢をかなえようと必死に取り組む。

 

利用者の自然な笑顔や表情は共感や感動を呼び、今では特別養護老人ホーム随一のフォロワー数(インスタグラム2万2000人、ティックトック1万6000人)を誇る。

 

職員はSNSで評価されることでモチベーションが上がり、自分のケアに自信が持てる。利用者は写真を撮られたり、外出したりすることで生活にハリが生まれる。課題だった職員不足も4年間で15人以上が入職。さらに県外からの入所希望者が増え、施設の運営面での効果も出ている。

 

「SNS〝映え〟は利用者の笑顔。福祉の本質が笑顔を大切にすることだとすると、SNS〝映え〟を意識することは福祉の本質に近づくことになる」と言う稲葉さん。介護は大切な仕事だというメッセージを発信し、なりたい仕事ナンバーワンにすることが夢だ。

 

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