〈社会福祉ヒーローズ〉人生にかかわる支援 試行錯誤し互いに成長

2023年0502 福祉新聞編集部
利用者に自立訓練をする萩野さん(右)

障害者支援施設「桜の風もみの木」(川崎市)

生活支援員 荻野美鈴さん

 

 就職して4年目の萩野さんが福祉の仕事を志したのは、大学4年の時に社会福祉協議会のアルバイトでコミュニティーカフェを手伝ったことがきっかけ。引きこもりの男性やゴミ屋敷の高齢女性らにかかわり、彼らの生きづらさを肌で感じ、力になりたいと思った。

 

 現在、精神障害者が自立に向けて料理や洗濯、服薬管理、コミュニケーションなどを訓練する入所施設で働いているが、訓練はトライ&エラーの繰り返しだ。

 

 例えば、薬の副作用で食欲が増して困っている利用者。朝昼晩の食事以外におやつを食べすぎてしまい、食費もかさむ。そこでどうするかを一緒に考え、太らないおやつを考えたり、買いすぎないよう金銭管理を訓練したり、1日の食事量を見える化したり。

 

 そうした試行錯誤をしていく中、何かがきっかけになり、利用者が成長していく姿を見られるのが何よりうれしいという。萩野さんにとっても新しい発見は刺激になり、ほかの支援者の多様な見解にも触れ、自分の引き出しを広げられる。

 

 利用者にはさまざまな人がおり、それぞれに過去、目標、課題がある。そのため、一人ひとりに適した支援をするには、その人のことをよく理解する必要がある。萩野さんは「うわべだけなく、その人の人生にかかわる支援にやりがいを感じる」と言う。答えが見つけられず悩むこともあるが、そんなときは先輩職員の手助けも受ける。

 

 社会の精神障害に対する偏見はまだ根深く、精神障害者が地域で生活するのは簡単ではない。ただ、萩野さんも初めから精神障害に理解があったわけではなく、当事者とかかわる中で、自分たちと何も変わらないという当たり前のことに気づいた。

 

 だからこそ「精神障害について多くの人に知ってもらい、誰もが生きやすい社会にしたい」。たくさんの人と関わり、自分を成長させてくれるさまざまな気付きが得られるこの仕事の魅力を広く伝え、一緒に働く仲間も増やしていく。 

 

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