転倒なく自分の足で歩くために〈高齢者のリハビリ〉

2023年0519 福祉新聞編集部

 人の筋力は30歳代でピークを迎え、それ以降徐々に低下していきますが、60歳代ではピーク時の15%程度低下すると言われています。その筋力の低下と合わせてバランス能力も低下します。

 

 バランス能力が低下することで、転倒による大腿骨や背骨、手首の骨折などが起きやすくなってしまいます。

 

 今回は転倒を防ぐための簡単にできるバランストレーニングを紹介します。

簡単にできるトレーニング

 足底や支持物が床面と接している外周の面積を支持基底面といいます。この支持基底面が広いほど安定し、狭いほど不安定になります。足を肩幅に広げて行うより、足を閉じた状態で行う方が難易度の高いトレーニングになります。

 

支持基底面のイメージ

 

 (1)片足立ち

 

 片足立ちが、14秒以下になるとバランス能力が低下し、転倒のリスクが高くなると言われています。両足よりも片足立ちではさらに支持基底面が狭くなり、バランスを保つことが難しくなります。

 

 最初から片足立ちすることは難しいため、バランスが不安定な人は、壁やいすなどに手を添えて安全に行うことをお勧めします。両手把持→片手把持(挙げた脚と反対側)→片手把持(挙げた脚と同じ側)と手の把持する位置によって難易度を調整することができます。

 

 (2)継足歩き

 

 タンデム歩行と呼ばれる運動です。床にラインを引くなど目印を付けて行います。運動の際は、かかととつま先を付けて歩くように意識します。バランスが不安定な人は少し歩幅を広げ、かかととつま先に少し隙間を空けて実施することでトレーニングの難易度を調整できます。

 

継足歩き

 

 バランストレーニングの多くは、それ自体に転倒のリスクがあります。いきなり難易度の高いトレーニングから始めてしまうと転倒してしまう危険があります。まずは確実に可能な運動から始めるなどの配慮が必要です。

 

 また、少し危険を感じるトレーニングの場合には、壁や手すりなど、バランスを崩したときに、すぐにつかむことのできる場所で行うなどの配慮が必要です。

 

 トレーニングを積み重ねることでバランス能力の低下を未然に防ぐことができます。また、バランスが悪い中での身体の使い方を覚えることも大切です。これは意識して身体を使うのではなく、繰り返し行い、体が覚えていくことが重要です。少しでも転倒を予防できる身体作りを目指して、今回説明させていただいたトレーニングを実施してみてください。

 

 

筆者=菅原達也 みどり野リハビリテーション病院 主任 

監修=稲川利光 令和健康科学大学リハビリテーション学部長。カマチグループ関東本部リハビリテーション統括本部長 

 

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