救護施設が困窮者の緊急一時受け入れ 独立した居室整備(福井県)

2023年0525 福祉新聞編集部
生活困窮者の受け入れ事例が増えた

 福井県大野市の社会福祉法人大野福祉会(木間幸生理事長)が運営する救護施設「大野荘」。赤い羽根福祉基金の助成事業を活用し、生活困窮者の緊急一時受け入れと、救護施設の一時入所ができる独立した居室を整備した。担当者に事業の成果を聞いた。

 

 大野市は、福井県の内陸に位置し人口は3万人ほど。施設は市街地から3キロほど南に離れており、周囲を田畑で囲まれている。

 

 大野福祉会は1960年に大野荘として設立された。77年には、救護施設「大野荘」から50人が入所する形で知的障害者支援施設「むつみ園」を開設した。

 

 79年に大野福祉会と改称し、99年には障害者向けのグループホーム事業を開始。2002年には、むつみ園保護者会からの要望と助成を受けて、食品加工や菓子製造を行う「よもやま作業所」を開設するなど、長年にわたって地域貢献してきた。

 

 大野荘は生活困窮者自立支援制度が始まった17年度から、生活困窮者の緊急一時受け入れを開始。市から委託を受けている自立相談支援センターに職員を配置。相談者の状況により、必要であれば大野荘で受け入れる。

 

 当初は、救護施設の空き部屋を利用していた。施設利用者と同じ空間で生活することに抵抗があったのか、17年度から19年度までで利用者数は1~2事例。

 

 自立相談支援センターの相談数は、年間平均50件ほど。居住環境が改善されれば、緊急一時受け入れにつながった事例もあったかもしれない――。

 

 事業担当の貝川久幸さんは「赤い羽根助成事業を機に、救護施設とは動線を分け独立した居室を整備しました」と話す。

 

 共同浴場として使われていたスペースを改修して、個室4部屋とシャワー室のほか、食事ができるスペースを整備した。

 

 利用期間は最長2週間。施設のある大野市と隣接する勝山市での事例を受け入れ条件にした。利用がないときは、救護施設の一時入所としても活用した。

 

 3年間(19~21年度)の助成金は約420万円。居室の家具・備品購入費用に充てたほか、21年度の1年間は臨時の相談員兼支援員を増員し、退所までをフォローした。

 

 居室整備後の3年間で、生活困窮者を受け入れたのは6事例。長年引きこもっていた60代男性が、同居家族の入院で生活できなくなり、受け入れを開始。その後、養護老人ホームの入所につなげた。

 

 ほかの事例では、60代男性が認知症の進行で居宅生活が困難になり受け入れを決定。その後、生活保護の手続きを経て大野荘に入所することになったことも。

 

 貝川さんは「事業開始当初から比べて、若干ですが受け入れ事例が増えたことを成果と捉えています」と説明する。

 

 6事例の中には、当初想定していなかった大野、勝山市以外の地域の福祉事務所から相談を受け、生活困窮者を受け入れた事例も1件あった。

 

 大野福祉会=1960年、障害児施設の退所後の施設が福井県内になく、求める声を受けて大野荘を設立した。現在、定員は130人。事業拠点はこのほかに、障害者支援施設「むつみ園」、就労継続B型事業所「よもやま」、グループホーム5カ所などがある。職員数は93人(正職員44、非常勤49)。