人と人を結ぶ「聞き書き隊」 横浜市で戦後の体験語り継ぐ
2015年03月10日 日浦 美智江・社会福祉法人訪問の家理事
私が住んでいる横浜市栄区は人口12万人、横浜市18区の中で最も高齢化率が高い。ところが介護認定を受けている高齢者が市内で最も少なく、元気な高齢者が多い区だという特徴をもっている。
区内には多くのボランティア活動があり、活発な自治会活動、文化活動があるが、そのリーダーを担っているのが70代はもちろん、80代の方も多い。そのリーダーの方々がそろって口にするのが、次の担い手の不足ということ。
これはどこの地域でも共通した悩みであろうが、現在活発な活動がされている栄区でも例外ではない。
戦後70年、今、全国的に地域の活性化がうたわれている。その地域を活性化させるには、地域の人たち、一人ひとりの意識に負うところが多い。そんな中で、最近楽しい話題が地域のタウンニュースに載った。
横浜市には中学校区に1館、「地域ケアプラザ」という地域包括支援センターを含む高齢者支援、地域交流活動事業をメーンとする福祉拠点が置かれ、栄区にも6館のケアプラザがある。その中の一つ、桂台ケアプラザで活動するボランティア団体「聞き書き隊」が作成した9冊の本が、近くの桂台中学校の図書館に展示されたというもの。
この「聞き書き隊」は2013年10月に発足。聞き手と高齢者の語り手が共同で、語り手の言葉を話し言葉の形で文章にしていく作業を行ってきた。
テーマは決めずに語り手が話し、昔の暮らしや、戦中、戦後の体験などさまざまな内容になっていて、個人だけではなく、日本や世界の歴史が詰まっているという。話し手の言葉がそのまま文になっているため、話を聞いているようで話し手の人柄を感じることが出来、読む人によりリアルに話が伝ってくるようだ。
出来上がった本には1冊1冊きれいな表紙がつけられた上、保護者による学校と地域のパイプ役「オレンジの会」の協力で手作りのポップが添えられ、書店のように1カ月展示、生徒が自由に読める。横に置かれた感想文を入れる箱にどんな文が寄せられるのであろうか。
ボランティアと福祉拠点と学校、更に保護者も加わり次の世代に伝えていく歴史と人生。栄区が人と人を結び、優しい地域、子どもたちの故郷になるようにと願う一つの灯がともった。
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