被後見人の選挙権回復 一連の動きが国際的評価

2015年0403 福祉新聞編集部
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名兒耶さん(右から2人目)、杉浦さん(中央)、長瀬さん(左から2人目)

 「成年後見人を付けると選挙権を失うのはおかしい」と知的障害のある名兒耶匠さんが国を訴えた訴訟で、2013年3月、東京地裁(定塚誠裁判長)は、被後見人の選挙権を剥奪する公職選挙法の規定を憲法違反とする判決を出した。そして国会は5月、74日間で迅速に法改正した。この一連の動きが海外でも評価されている。ウィーンで開かれた表彰式に出席した名兒耶清吉さん(匠さんの父)と長瀬修さんに感想や報告を寄せてもらった。

長瀬 修・立命館大学客員教授

 2月25日、ゼロプロジェクト(ZP)によって、日本の成年被後見人の選挙権回復が革新的政策として表彰された。

 

 ZPとは、オーストリアのエッスル財団が世界での障害者の権利推進を目的として実施しているプロジェクトである。

 

 表彰式は国連ウィーン事務所で開催され、原告を支えた名兒耶清吉氏、主任弁護士を務めた杉浦ひとみ氏(東京アドヴォカシー法律事務所)、国際的な情報収集・発信を担当した長瀬が出席した。

 

  ZPが2012年から開催しているゼロ会議は今年、政治参加と自立生活をテーマに取り上げた。日本の選挙権回復は、全部で11の革新的政策の一つとして選出されたのである。他の政治参加の革新的政策としては次の五つが選出された。

 

①ニュージーランド=選挙過程へのアクセス向上(2014)
②スペイン=投票 と選挙過程への参加(07)
③南アフリカ=障害者議員の平等なアクセス(06、09)
④ウガンダ=障害者議員枠(1995、96、97)
⑤イギリス=公職 への立候補支援予算(2012)

 

 日本で13万6000人の選挙権が回復されたことは障害者権利条約第29条(政治的及び公的活動への参加)の好事例として国際的にも評価されてきたが、今回の表彰によって、その評価は確定したと言える。

 

名兒耶 清吉・NPO法人おおぞら理事長

 裁判を通じて成年被後見人の選挙権を回復できたのは、多くの人の支援が得られたから。世界的には、まだ制限されている国があると聞く。今回の表彰で、日本が成し遂げたことが高く評価されたのだと実感した。

 

 ウィーンには、乗り物が苦手な匠は出席できなかったが妹たちが一緒に行って家族ぐるみで闘ったことを分かってもらえたと思う。匠は、外国で表彰されたことの中に自分も入っていると理解したようだ。我が家では「こんな大きなことになるなんて」という気持ちも若干あるが、おかしいことをおかしいと言って本当に良かった。

 

 提訴した時は、生きているうちにまた匠と一緒に投票に行けると思っていなかったが、法改正が早く、匠との約束が果たせた。

 

 ただ、13万6000人の選挙権が回復されたといっても、実際に何人が投票に行けたか。どうせ我が子には分からないと思い込んでいる親も多いのではないか。投票所での合理的配慮もほとんどないというのが現実だ。

 

 昨年12月の衆議院選挙では、私たちの住む茨城県は四つの選挙が重なり、投票に慣れていた匠もさすがに混乱した。係の人に「政党名を書いてください」と言われても「せいとうめい」が分からない。市の職員がサポートしてくれて投票できたが、例えば公報を見せて指さしで確認してもらうなど、さまざまな工夫が必要だと思う。

 

 白票になっても投票の意思表示をすることを大事にしていけば、いまは困難のある人たちも慣れていくと思う。成年後見制度そのものの見直しも課題だろう。

 

 まだまだ差別や偏見をなくすためにやることはたくさんある。

 

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