A型事業か農業法人か 農業中心の障害者就労支援

2015年0422 福祉新聞編集部
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ごぼう茶の加工をするメンバー

 共働農場から小規模作業所を経て社会福祉法人になった宮崎県都城市の「なのはな村」(藤﨑芳洋理事長)は、農場運営を就労継続支援A型事業にするか、農業生産法人として発展させるかで悩んでいる。循環型の有機農業と6次産業化に取り組む同法人の選択は農業に携わる他の法人にも参考になりそうだ。

 

共働農場から法人へ

 

 「障害のある人もない人も、仕事や暮らしを支え合って楽しく生きていける町をつくりたい」。同法人は共働農場として1986年にスタートした。農薬も化学肥料も使わない有機農業の志に賛同した数人のメンバーと田畑を耕し、赤鶏を飼い、野菜や自然卵を売る生活が続いた。

 

 最初に訪れた転機は93年。「特別支援学校を卒業する子どもの居場所が欲しい」と頼まれたことだった。

 

 「作業ができる人だけでなく、できない人のことも考えなくては」と考えた藤﨑理事長は共働農場を小規模作業所に変え、農業以外の仕事に取り組むことを選択。人参ピューレや漬物などの加工品づくりや、自然食品店を開くなど個々に合った仕事を選べる環境づくりを進めた。

 

 その後、メンバー減少などで解散の危機もあったが、残ったメンバーや家族から「続けて」と要望され、運営基盤をしっかりさせるため社会福祉法人化を決断。2005年に法人格を取得し、市から借り受けた土地に知的障害者授産施設兼レストランを開設した。

 

最良の答え出す

 

 同法人は現在、就労継続支援B型や就労移行支援事業、生活介護、グループホームなどを運営しているが、根幹は循環型の有機農業と、生産・加工・販売を一貫して行う6次産業化の取り組みだ。

 

 田んぼに放したアイガモが雑草を食べ、そのふんは肥料に。収穫後のもみ殻やわら、野菜くずは赤鶏の餌になったり、赤鶏のふんと混ぜて畑の堆肥にしたりする。魚粉など一部の天然肥料は購入するが、循環型の有機農業が完成している。

 

 栽培される野菜は種類も豊富で、同法人が運営する2カ所のレストランで使われるほか、卵黄油やみそなど19種の自主製品に加工。かごしま有機生産組合からゴボウ茶などの加工も請け負っている。

 

 また、野菜などはレストランの直売所や市内のスーパーで販売。高値でも売れるのは安心・安全と味が評価されているからだ。

 

 しかし今、農場運営を就労継続支援A型として強化するか、農地法に基づく農業生産法人として発展させるかの岐路にある。

 

 これまで地域の事業所などにお願いし年間5~6人を一般就労させてきたが、市内には就労先自体が少なく、それなら法人でA型事業か農業法人を立ち上げようという考えだ。

 

 メンバー45人の平均工賃は月約2万円。A型なら2~3倍の工賃を払えるだろうが、それ以上は難しい。一方、農業法人にすれば商品取引の円滑化や融資を受けられるメリットがあり、最低賃金も払えると見込む。ハードルはかなり高いが、共働農場時代には払えていた実績もあり、当時のように野菜の宅配などをすれば決して不可能ではないという。

 

 「田舎では就労場所の開拓に限界がある。自分たちも努力して就労の場を作らないといけない」という藤﨑理事長。「A型か農業法人か時間をかけ、メンバーに最も良い答えを出したい」と語る。

 

 同法人の歩みは、農業中心の就労支援に取り組む全国の法人にも参考になりそうだ。

 

農場で麦踏みするメンバー

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