社会福祉法人風土記<13>函館市民生事業協会 下 法人として連を組み”いか踊り”

2016年0714 福祉新聞編集部
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保育園のこども太鼓

 社会福祉法人となった函館市民生事業協会の「函館高砂授産場」は順調に動き出した。が、既製服業者の乱立でやがて原材料の生地が手に入らなくなり、加えて学童服は金銭給付が原則となって仕事は激減、1968(昭和43)年に閉鎖。法人の財政は苦しく、当時常務理事だった本田嘉夫の妻、悌子夫人(1922年生まれ)は函館市松陰母子寮の寮長をしていたが、その給料の全額を法人に寄付していた。

 

 社会状況・生活意識の変化から民生寮の利用者は急激に減少。その半面、函館では救護施設対象者の施設不足が深刻となったため、1972(昭和47)年「函館民生寮」を閉鎖、施設を改築し生活保護法による救護施設「明和園」(定員84名)として翌年3月に再出発する。

 

 当初の入所者は86人、男女比は6対4。1982年から88年までは女性の割合がやや増えて男女ほぼ同数、精神障害で居宅より施設生活を希望する女性が増えてきた。救護施設が精神障害者の中間施設的役割を果たすようになった時代背景を反映し、平成になると男性の割合がまた増えてくる。

 

 障害程度の重度化、重複化傾向もみられるようになる。生きがい対策の一環として国語、算数、社会、音楽、珠算の5教科を教える「明和園学校」を開校するなど、次々と新しい取り組みが始まる。

 

 法人の会長職は1976(昭和51)年まで函館市長、その後民間人の竹田留治会長が勤めるが、1985(昭和60)年に理事長制となった。初代理事長には本田嘉夫が就任する。

 

■隙間風ピューピュー

 

 本田嘉夫理事長の長男・英孝現理事長(66)が国立函館視力障害センターを辞して法人に勤めたのは1989(平成元)年、39歳の時。「函館市松陰母子寮」で家族と共に暮らし、そこで育った。「その母子寮が、ニーズはあるのに利用世帯は減る一方。自分が住んでいたときは当たり前と思っていたが隙間風はピューピューと部屋に吹き込む。これではダメだ、なんとかしなければ。自分の家が朽ちていくようで、居ても立ってもいられなかった」と語る。

 

本田英孝現理事長

本田英孝現理事長

 

 本田嘉夫理事長は肺線維症を抱えており「もう保護司、民生委員は辞して、法人一本に専念するぞ」と家族に語っていた矢先、1995(平成7)年に逝く。本田嘉夫理事長の死後、悌子夫人が理事長となり、その後3代は地域の理解者が理事長職を担う。英孝理事長(平成25年就任)は当時、常務理事兼明和園長等として施設サービスの質の向上に専心する。2005(平成17)年には公立保育園の「函館桔梗保育園」(定員90名)が法人の経営に。そして「我が家を立て直す」という初心の夢の実現に拍車をかけていく。

 

 念願の新築第1号は救護施設「明和園」(定員100名)、2009(平成21)年6月落成。2013(平成25)年には「函館市松陰保育園」(定員120人)を移転新築。1998年に名称変更した二つの母子寮のうち、「函館市松陰母子ホーム」(定員20世帯)が〝思い出の地〟を離れ「函館高砂母子ホーム」の隣接地に移転新築し運営を開始したのは2015(平成27)年1月、合築とし「函館高砂保育園」(定員120名)も同じ建物に入った。「函館高砂母子ホーム」(定員20世帯)も同年10月に新築、運営を開始。夢見たときから27年がたっていた。

 

 「母子家庭等就業・自立支援センター 無料職業紹介所」事業も道・市から委託を受け実施。保育園では「こども太鼓」や「こども鼓笛隊」、母子ホームでは「キッズソーラン」を組織して園内や法人行事、地域との交流等で活躍。職員は「函館市港まつり」に法人として連を組み毎年〝いか踊り〟で市内を練り歩く。地域の子どもたちも通う「学童保育」も函館市松陰母子ホームと函館市松陰保育園で実施。「明るくなった建物以上に子どもたちは明るい」「退所しないで、ずっと住んでいたい」と言う母親もいて「うれしいような、少し困るような」と職員は苦笑する。

 

■施設は地域と共に

 

 「明和園」と「函館市松陰母子ホーム」には「地域交流の場」でもある大きなホールもでき、地域の人たちの会合等にも活用、「施設は一家」「施設は地域と共に」を掲げる法人の新しい時代が始まった。

 

 「函館市民生事業協会」は、民生委員で構成される社会福祉法人ではないが、法人をけん引してきた杉崎郡作は民生委員、本田父子は民生委員であり保護司でもあり、法人にかかわってきた他の理解者たちも〝根っからの福祉人〟が多い。

 

 

函館市の松蔭母子ホームと函館高砂保育園(合築)

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