社会福祉法人風土記<28>八幡会 中 保育から知的障害者の療育まで

2017年1019 福祉新聞編集部
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「八幡保育園」のおやつタイム。塚田紀子主任(左から3人目)と永田律子園長(右)

 志賀幸村初代理事長は、「八幡保育園」の中に知的障害児がいることに気付き、「あけぼの学園」開設を決めた。ここから資金集め、土地探しが始まった。

 

 理事長夫妻の熱意が人を動かし、1962(昭和37)年4月に赤い羽根募金から289万円の助成を受けられる運びとなったが、土地取得は困難を極めた。

 

 雲仙市南串山の倉越の丘に土地を得て建築が始まった時には、志賀節子さん(78・2代目志賀稔理事長夫人)は、「毎日大釜での炊き出しに大忙しだった」と回想している。完成し職員募集をするが、今度は東京オリンピック(1964年)景気や福祉施設が社会で認知されておらず難航。

 

 一方、今まで福祉施設に振り向きもしなかった金融機関が、この時期あたりから目を向けるようになった。
 なんとか船出したが水不足のため、雨水をためたり、井戸を掘ったりしたが間に合わず、洗濯は川に下りてするような状態の時もあった。

 

 このようなことがあって、「分園」「八雲寮」は隣接する南島原市加津佐町に土地を求めて建てた。それから55年を経た現在を「あけぼの学園」の松山康之支援課長(42)は「先日、入所して8年目の重度の知的障害の人が、声を初めて出したんです。8年間を振り返れば淡々と日が流れているようですが、彼は生きることに懸命だったんです」と語る。心なしか目が潤んでいるように見えた。

 

 志賀竜二副施設長(32)にも聞く。

 

 「中学生の時の福祉体験学習が、親(志賀広子総合施設長)が経営に関わるこの施設だったんです。その縁で福祉の勉強をして就職しました。重度の人は変化がないと思っていましたが、違っていました。丁寧に関わると靴下が履けるようになったとか、シャツの前後が分かるようになったとか、また純粋な気持ちをストレートに言う姿に、私自身学ばせてもらっています」。

 

「あけぼの学園」の利用者と職員合作の絵画『雲仙普賢岳』の前で。松山康之支援課長(左)と志賀竜二副施設長

 

 施設(重度障害者・68人)の体育館の壁でひと際目を引くのは、〈僕・私の仲間たち~私の好きなこと~〉という職員の工夫が光る掲示物である。紹介したい。

 

○(利用者の)坂本義浩さんーー礼儀正しい義浩さん。あいさつがていねいです。歌も得意なんですよ。

 

○岡安男さんーーペンと手帳それに新聞、安男さんの大切な物です。ジャーナリスト目指していますか?

 

 続けて『35・25・20周年誌』(1998年刊)から保護者の声を一つ。 「その頃(草創期)は国道も舗装されてなかったし親子であの坂を何度か滑りながら(学園に)行きました」。

 

 ここに登場する坂道のことを、「開園当時から何度も陳情した結果、やっと2010(平成22)年に救急車など緊急車両が通れる舗装道路になった」と志賀稔理事長は感慨深げにつぶやいた。

 

 八幡会の原点である「八幡保育園」は、1952(昭和27)年、八幡神社の季節保育所から始まった。

 

 永田律子園長(60)は、勤続40年のベテランらしく語る。「困っている子、老人、障害のある人に〝幸せ〟を運ぶ仕事がしたいと、念願のこの施設に就職し、今日まで昔の児童施設『あかつき』『あけぼの』と歩いてきました。子どもに小さなヒントを与えると、行動してくれるんです。近くの交流先の特別支援学校の運動会では、障害のある子に自然と手を貸すようになります。これからも創設者がここを〝学びの場〟としたことを忘れずに」。

 

 塚田紀子主任(43)は「私の子ども3人もここにいます。ここは『デイサービス宮』とつながっていますから、日常的にお年寄りと交流ができ、自然と心が育ちますね」。

 

 

 八幡会から二つの社会福祉法人が発展的に誕生した。一つは諫早市に1991(平成3)年、つかさ会・志賀司朗初代理事長(幸村三男/1939~2003)。子息の正幸2代目理事長(49)は、父母の福祉に取り組む姿勢に共感し、東京での大学生活を終え、法人の立ち上げに参画した。

 

社会福祉法人つかさ会の志賀司朗初代理事長

 

 「父は八幡会の施設長時代から心していた、障害のある子どもたちを社会に役立つ一人の社会人として世に送り出したいという一念から、知的障害者の〝学ぶ場〟〝働く場〟として、通所の授産施設をいくつか開設しました。その一つ『諫早ワークス』は市の指定ゴミ袋、工場用のウエス製造を手掛けるまでに成長しました。私自身は、2011年3月11日のあの東日本大震災の前日まで宮城にいました。その拾った命を父のように広く社会に役立てたい」。  

 

将来を見据えるように語った。  

 

【髙野 進】

 

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