社会福祉法人風土記<43>宇和島厚生協会 下 新施設は小規模化に対応

2018年1227 福祉新聞編集部
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約470人が参加した第33会いもたき大会

 愛媛県宇和島市の宇和島厚生協会(曽根貞義理事長)の児童養護施設「みどり寮」について書いている。厚生協会が法人の認可を受けたのは1955(昭和30)年だったが、その萌芽は50年に民生委員による「宇和島市民生事業団」が組織され、戦災孤児などの収容保護を始めたのが、みどり寮のスタートになる。

 

 住吉町にある現在地に最初のみどり寮が新築されたのは77(昭和52)年。宇和島市の市有地を賃借した鉄筋コンクリート2階建てだった。それから30年以上が経過して、老朽化が叫ばれると、改築の話が持ち上がった。2009年7月に厚生協会の理事会で耐震化改築が満場一致で決定され、直ちに建設委員会が発足、現在の曽根理事長が委員長に指名された。

 

 住吉町の同じ場所での建て替えで、総工費は仮寮舎への移転費用も含めて約2億7000万円。国と愛媛県からの補助金を差し引いた約7563万円が法人としての負担分になった。このうち5200万円を福祉医療機構からの融資で賄い、約1100万円の寄付金が集まった。

 

 落成式は12(平成24)年7月。祝賀会には同じ愛媛県内選出の元厚生労働大臣、塩崎恭久氏らが出席した。塩崎氏は、法人の第4代理事長で全国児童養護施設協議会長(1995年4月~99年3月)を務めた谷松豊繁氏(92)から「子どもの問題は大事なことだから勉強しなさいと言われた」と、「社会的養護の子どもたちに関心を持ったきっかけ」について語った話が、季刊「児童養護」(2013年)に掲載されている。

 

 新寮舎は鉄筋コンクリート3階建て。総床面積は旧寮舎の705平方メートルから1290平方メートルに増えた。2階が女子、3階が男子フロアで、トイレも風呂も男女別になった。新旧の寮舎を知る松本清寮長(68)は「なるべく子どものプライバシーを守るため、個室とまではいかなくても、2人部屋にするとか、そのへんの配慮ができるようになった」と話す。

 

 14年に理事・寮長に就任した松本寮長は「当初は親が行方不明というケースが多かったが、今はほとんど親がいる。家庭の再構築に向けてのエネルギーが、以前より強くなった」と話し、新しい寮には家庭支援の相談室や親子訓練室が設けられた。

 

 法人の施設としては、みどり寮のほか、03年4月、地域の子育て相談窓口になる「こども家庭支援センターみどり」を宇和島市総合福祉センター内に立ち上げた。05年7月には、みどり寮から車で5分ほどの場所に地域小規模児童養護施設「子どもの家すみよし」を開設した。「入所児童の個別化、小規模化に取り組み、継続的に養育、支援の質の向上に努力している」として、愛媛県社会福祉協議会の「第三者評価」(17年)で「時代に合った福祉サービスに対応、社会に貢献した功績は大きい」と高い評価を受けている。

 

 

子どもの家すみよし

 

 

 みどり寮の定員は50人。現在は2歳から高校3年生までの39人が入寮している。かつては帰る家のない子が多かったが、今は途中で家庭に戻るケースも増えてきた。寮生への直接処遇に当たるみどり寮の職員は16人で、平均年齢は36歳(10月1日現在)だ。

 

 若い職員が多いことについて松本寮長は「共に汗をかいてくれる若い先生が多いことはいいことじゃないですか。頼んだり頼まれたりが、気軽にできますから」と話す。だが、「今は寮生の9割以上に親がいるんですが、若い職員が年上の親にアドバイスをすることで、反感を買うこともあります」と言うのだ。そのために、みどり寮では家庭支援の専門相談員で対応している。

 

 最後に、地域との関わりについて触れておきたい。みどり寮では毎年秋に、地域交流事業の「いもたき大会」が開かれている。秋に月見を兼ね、屋外で里芋を炊き、大勢で宴会をするもので、愛媛県内では各地で開催されている。50年誌に「地域の自治会、児童愛護会、婦人会、老人クラブ、民生児童委員等に働きかけ、施設の社会化と地域の親睦を目的とした」との記述がある。

 

 第1回は1980(昭和55)年。今年は7月の西日本豪雨で、宇和島市内でも死者が出たことから自粛することになったが、昨年の第33回大会には約470人が参加。寮生の幼児や小学生が踊りを披露するなど、大盛況だったという。

 

 松本寮長は地域への感謝の言葉をこう話す。「最初はうちの子どもらを励まそうという意味合いで、地域の交流として始まった」と振り返りながら、「みどり寮の開設以来60有余年。地域の中で愛され、支えられ、育まれてきました」。 

 

【澤晴夫】

 

(関連記事)

<43>宇和島厚生協会 上 戦災孤児の保護が始まり

<43>宇和島厚生協会 中 市内を転々とした「みどり寮」

 

 

 

 

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