社会福祉法人風土記<52> 天竜厚生会 下 “永久革命”のように改革・改善

2019年1009 福祉新聞編集部
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右から塩崎信男・第4代理事長、河合晴夫・第5代理事長、山本たつ子・第6代理事長

 戦後の福祉が様相を一変したのは2000(平成12)年である。

 

 「措置から契約へ」
 「施設から家庭へ、地 域へ」

 

 この年、社会福祉基礎構造改革をめぐるやりとりを経て、社会福祉法の一部改正と介護保険法が施行された。高齢者ケアと保育所のサービスへ企業が参入。社会福祉法人も、うかうかしてはいられなくなった。

 

町へ、里へ

 

 「山にあるはハンディ」

 

 職員に発想の転換を求めた第4代の故・塩崎信男理事長(元厚生省監査指導課長)、さらに第5代の河合晴夫理事長(元静岡県自治研修所長)も人里への進出とサービス強化を打ち出す。法人独自に、あるいは市町村の要望をもとに、障害者グループホーム、高齢者施設、保育園や幼保園、子育て支援拠点などを次々と設けていく。

 

 そのハイペースぶりを職員数の推移が物語っている。

 

 1980年代、600人のラインを上下していた。90年代に入ってパートを採用し始め、ゆっくり右肩上がりへ。初めて1000人を突破したのは99年(1033人)。それが2011(平成23)年に2000人を超え、19年4月現在2449人。浜松市を中心に静岡県内7市町村で展開する全258事業の1日利用者は約5600人に及ぶ。

 

 戦後日本の技術力の「金字塔」といわれる佐久間ダム(1956年完工)に近い北遠地区の天竜区龍山町(旧龍山村)。高齢化率62%、県内有数の過疎地だ。介護保険制度に先立つ1999年、厚生会は龍山診療所、デイサービスセンターなどを新設する。

 

 「ここを含め赤字事業は30ほどあります。でも公益事業は社会福祉法人の使命」

 

 創始者の山村三郎事務局長の長女で第6代の山本たつ子理事長(71)は明快だ。2010(平成22)年に就任した。

 

天竜病院、県立天竜特別支援学校と並んで広がる天竜厚生会広大な医療・教育・福祉ゾーンだ

 

経営と研修

 

 「福祉は利益を求めない企業」

 

 経営マインドを重視する山村の方針でコンピューターの導入に着手したのは1978(昭和53)年である。集中管理による事務効率化だ。公費(措置費)の上にあぐらをかかず、できるものは内部留保し、法人の体力をつけよ、と。以後、組織を挙げて「健全経営計画」(1993年)をはじめ4度の「中・長期計画」をまとめ、会計システムの刷新にも取り組んできた。

 

 「九十九匹はみな帰りたれど、まだ帰らぬ一匹の行方訪ねん」

 

 聖書の精神を基本理念に定めたのも、この一環だ(2002年)。第2代の内山竹蔵理事長の没年(1965年)に建てた胸像台座のフレーズである。

 

 だが、いかにして魂を吹き込むか。

 

 サービスの品質を高めるISO9001認証を全職場で取得(2005年)。職員による国内外の研修参加や政府機関などへの出向、リスクマネジメントなど内部委員会の充実、福祉教材やボランティア読本の独自編集といった処遇改善に向けた風土を築いてきた。〝永久革命〟のように。

 

 一方でアジア研修生や日系ブラジル人を積極的に受け入れてきた。

 

困っている人を

 

 富士山の西麓、名勝・白糸の滝(富士宮市)に近い特別養護老人ホーム「しらいと」(定員110人、旧・白糸寮)。満床で待機者も多い。法律上、要介護度3以上でないと入れない。ここの平均は3・35(今年6月現在)。全国平均は3・94だから、介護保険収入は当然低い。「赤字ですが、利用を断ったら行き場がありません」と小林さおり施設長(48)。

 

 ここでは、施設の夏祭りが地域の唯一の祭りになっている。地区の消防団も参加し、盛大だ。そういえば、本部施設内で毎秋開く「厚生会まつり」も利用者や家族、住民ら6000~7000人でにぎわう。

 

 山の上にあった障害者入所支援施設「天竜ワークキャンパス」が、県中部の藤枝市に新設の「アクシア藤枝」へ移ったのは2013年。この種の施設の薄かった地元の強い要望だった。

 

 社会問題化している子どもの貧困にも力を注いでいる。生活困窮者支援(県委託事業)として研修センターを使った小中学生に対する合宿型学習支援や、高校生世代へのキャリア形成支援(就労体験)などを展開する。課題は、事業終了後の支援の途切れ。また孤立するのではないか、と。

 

 「各地の社協、NPO団体と協働し、制度を横断した包括的な家族支援が求められている」と山本理事長。助けを求めてさまよう「一匹」を探す日々が続く。=敬称略

 

【横田一】

 

 

 

 

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