地域福祉の向上を
滝沢武久・元全家連事務局長

2012年1112 福祉新聞編集部
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 わが国の障害者は約723万人で、このうち精神障害者は323万人。厚生労働省は先般、精神科受療患者調査の数値を公式に精神の障害者数として認定した。

 


 これまでのわが国の精神科医療は、こころ病む人や社会的不適応者、そのおそれのある人の収容・保護だった。また法律は、治療技術のない精神病者監護法、精神病院法時代も、薬物治療が始まった精神衛生・保健法時代も、私宅監置から強制入院・収容保護のための保安思想に基づく、精神科医療施設への監禁手続き法だった。

 

 精神科医療界は「病気だから精神医学で治す」と言い、とても医療とは言えない強制入院・収容隔離をしておきながら、1957年の緊急救護施設創設には大反対。精神医学の権威を楯に「精神医療」(福祉不必要論)と言い続け、国民に誤認させてきた。

 

 また、64年のライシャワー大使事件以降のメディアによる病歴報道は、強制入院中心の精神科医療をますます肥大させた。民間医療機関は経済原則に縛られ、恣意的な診断・治療で病床を膨らませた。多剤・大量・長期の投薬でホスピタリズムを生みながら、医者はそれを陰性症状としてなお薬を増やしている。

 

 その証拠が入院患者34万人中、1年以上が20万人、5年以上が13万2000人、20年以上が4万5000人という現状だ。こうした世界一の精神科病床数と超長期入院について、二人の精神科医が「日本収容所列島」「近代日本の精神医学と法〜監禁する医療の歴史と未来」という本を出版しているが、そこには精神障害者のリハビリも福祉も人権もないことを危惧している。

 

 欧米は40~50年前に、ホスピタリズム回避と人権確保のため地域福祉・地域医療に転じた。それが世界人権宣言、障害者の権利宣言、国際障害者年の「障害者の完全参加と平等」の推進決議になった。

 

 わが国では精神障害者の家族たちが70年以降、家族会を組織し、精神障害者福祉法の創設や障害者基本法の改正、精神分裂病の呼称変更、優生保護法の改正などを要請し実現させた。また、小規模地域作業所やグループホーム設立などにも取り組んだ。

 

 そして2006年に障害者自立支援法が成立し、医療は急性期のみで、福祉が障害種別を超え地域生活を支援することになった。これによりわが国でも居住・就労支援やピア活動、自己決定の支援があれば、多くの精神障害者が地域で生活できるよう制度改正が行われつつあり、新たに障害者総合支援法が成立した。

 

 「いつになったらわが子を社会復帰・社会参加させてくれるのか?」と精神科医療に期待し続けてきた多くの家族たちは、今こそ社会福祉事業者が精神障害者の地域福祉向上に取り組んでくれることを強く望んでいる。

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