養護老人ホームの定員割れ
山口保雄・愛友園理事長

2013年0128 福祉新聞編集部
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 茨城県内には15の養護老人ホーム(合計960床)があり、2011年1年間の施設入所率の平均は89%で、約100床強が空いています。

 

 個室化された最新の施設でも空床実態があります。変動はあるにしても特別養護老人ホームの常時50~150人待ちとの違和感が大きすぎるのです。

 

 特養は、利用者の希望を直接施設に伝えて入所出来ますが、一方、養護は、利用者の希望を施設が直接受けることは出来ず、市町村で受け付け、判定会議を経て養護老人ホームに入所委託を決定するという、措置制度であるという違いがあります。

 

 ところで、養護老人ホームにはどのような方が入所しているかといえば、生活保護受給者など貧しい人が条件ですが、その人物像は、知的障害者、統合失調症、脳血管性精神障害、アルツハイマーといった精神障害のある方が当園の場合60%を占め、後の40%も糖尿病など生活習慣病を持っています。

 

 今後ますます高齢化社会が進み、なんらかの精神障害を持つ方が増える傾向にあることから、受け皿としての養護老人ホームの必要性が高まっています。精神障害を持つ人などの生活支援は困難が付きまといますが、支援員、相談員を中心に他の専門職と共に対応しています。医療機関との連携による健康管理や個人の健康状態にあった食事の提供にも気を配って対応しています。

 

 さまざまな問題を抱える独居老人が、生活保護を受けながら町で暮らすより、養護老人ホームに早期入所することで、きちんとした食事、健康管理などで自立が持続出来てくると考えられます。それによって特養への移行をしない、または移行を遅れさせることの期待が大いにあります。

 

 しかし、こうしたわれわれの努力が報われないどころか、一部ですが「うちの町は養護に措置はしない」とまでいう声が聞こえてくるのは、どういうことでしょうか。

 

 06年の三位一体改革により措置費用は市町村の一般財源化となったことで、該当者を掘り起こし、利用申請、審査・決定、施設委託とつながる制度の責任体制の中で、特に国の責任の曖昧化を許してしまい、市町村も制度を使いたがらなくなっているように思えるのです。該当者は増えているのに、措置されないケースがあるとしか思えないのです。

 

 当園は、同じ建物に特養施設も設置されていますので経営面と施設運用上の違いが良く分かります。養護老人ホームの利用方法を知らない人たちも増えています。市町村レベル、及び福祉担当者レベルでも、知識や方法にばらつきがあるのでは? と推測されます。

 

 多様化している社会に適合出来ない高齢者の人としての尊厳を守り、生活支援を行うには、措置制度による福祉行政サービスが最も有効であると考えます。

 

 そこで①市町村は養護対象者に対する福祉責任について財源指向からの転換と担当職員の育成を図る②施設職員の支援能力向上、養護職員向けのトレーニングを充実させる−ことに取り組んでほしい。養護老人ホームの措置制度を廃止・縮小することは福祉の行政責任放棄になると声を大にして訴えたい。

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