褥瘡防ぐシーティングにこだわる 福岡の老健からざステーション

2015年0902 福祉新聞編集部
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新型リクライニング車いすの背張り具合を調整する木山主任

 崩れた座位姿勢による2次障害を防ぐため、16年にわたりシーティングに取り組んできた施設がある。福岡市早良区の認知症対応型介護老人保健施設「からざステーション」だ。自ら痛みなどを訴えることが難しい認知症高齢者の特性を考慮し、モニタリングなど丁寧な対応を心掛けている。

 

 精神科病院を母体とする医療法人泯江堂(三野原義光理事長)が運営する同施設は、認知症状の改善やリハビリを行う専門施設として1997年に開設した。定員は入所80人(認知症専門棟40人、一般棟40人)、デイケア30人だが、一般棟の利用者もほとんどが中重度の認知症がある。

 

 運営方針は、転倒などを恐れ、利用者を薬や器具で抑制するような看護・介護をしないこと。4人の作業療法士(OT)を中心に、認知症の予防・改善に効果があるアニマルセラピーやくもん学習療法、回想法などを通じ、生活の質(QOL)の向上に努めている。

 

 シーティングに取り組んだきっかけは、開設1年後にOTとして勤務した江原公洋事務長が、利用者の座位姿勢を見て「これでは褥瘡や変形などの2次障害を引き起こしかねない。何とかしたい」と思ったこと。江原氏は車いす業者や専門家に話を聞き、クッションを手作りするなど手探りで取り組んだ。「当時は調整機能付き車いすの必要性を理解してもらえず、介護職員には余計な負担が増えると思われていた」と振り返る。

 

 その後、江原氏はシーティング・コンサルタント資格を取得。知識や技術の向上と相まって正しい座位が取れ、日常生活動作(ADL)が向上する利用者が増えた。周囲の評価も変わり、必要な機器も整備されていった。

 

 現在ある車いすは30台。標準型は移動時のみ使い、㈱ラックヘルスケアのレボⅡなど調整機能付き7台、㈱松永製作所のオアシスなどティルト・リクライニング型5台、㈱きさく工房の新型リクライニング5台をシーティングに使用する。特に福岡県に本社があるきさく工房の車いすは、リクライニングしても身体がずれず、アームサポートの高さ、背中の張りと体幹・骨盤パッドの位置などが容易に調整できるという。

 

 また、クッションは㈱アクセスインターナショナルのJ2や、㈱加地のエクスジェルのほか、手作りクッションを使用している。

 

シーティングでは身体状況、座位能力の 把握が欠かせない

シーティングでは身体状況、座位能力の
把握が欠かせない

4人のOTが連携

 

 シーティング担当は4人のOTで、認知症専門棟、一般棟、デイケアを3人が分担。木山純栄主任が全体統括やサポート役を果たす。江原氏はシーティングの基礎を教えたり、困難ケースへの対応を助言したりするコンサルタント的役割を担っている。

 

 実際のシーティングは、変形・拘縮などの身体状況や座位能力を把握したり、臀幅や膝下の長さなどを計測したりしてその人に合った車いすを選び、調整する。認知症の有無でやることに変わりはないが、認知症高齢者は痛みや希望をうまく伝えることが難しいため、より丁寧な対応が必要になるという。

 

 「家族の話を聞いたり、生活の様子を見たりして、どんな生活をしたいか推察しているが、本当にこれで十分か常に自分に問いかけている」という木山氏。丁寧なモニタリングを心掛けるとともに、OT同士で症例検討会を行うなど個々に合ったシーティングを模索し続けているという。

 

 シーティングを始めて16年。正しい座位が取れたことで、利用者が自然排便できるようになったり、「ずっこけ座り(仙骨座り)を直してほしい」と介護職員が依頼してきたりするなど施設全体でシーティングの意識が高まっている。

 

 「OTにシーティング・コンサルタント資格を取得させるなどさらなる技術向上を目指すとともに、利用者の変化にいち早く対応できるチームアプローチを確立したい」と話す江原氏。手探りで始まったシーティングは、2次障害防止だけでなく、利用者のADLとQOL向上に欠かせないものになっている。

 

 

 

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