排せつリズムに合わせてケア 1年で3人がおむつを脱却した特養

2015年0928 福祉新聞編集部
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個々に合ったおむつを各居室に置く ようになり、職員の負担は激減した

 大阪府八尾市の特別養護老人ホーム「成法苑」は、昨年7月から排せつケアの見直しに取り組んでいる。布おむつや安易な下剤の使用をやめ、一人ひとりの排せつリズムに合わせたケアに変えることで、利用者の排せつ状態は大幅に改善。職員の負担やコスト軽減にも役立っている。

 

 社会福祉法人八尾隣保館(荒井惠一理事長)が1996年に開設した同苑は、入所定員50人(平均要介護度4・2)の従来型施設。排せつケア見直しのきっかけは、生活相談員の小山隆博さんが、昨年6月に研修会に参加したことだった。

 

 当時は、インナーに布おむつと2種類の尿取りパッド、アウターに布製カバーを使用。1日3~4回の定時交換で、尿便漏れのある人のベッドにはラバーシーツを敷き、マットレスなどが汚れないようにしていた。

 

 そんなケアに漠然とした疑問を抱いていた小山さんは、講師でおむつフィッター1級の熊井利將・つわぶき会T−JOBプロジェクトマネジャーに相談。7月5日に同苑に来てもらい、介護職員で排せつ委員の松岡リエさんと赤松栄子さんと一緒に問題点などを話し合った。そしてAさん(78)をモデルに14日からケアの見直しを始めた。

 

 Aさんは要介護5で軽度の認知症がある女性。座位が安定せず、2人介護が必要なため、昨年3月の入所以来、布おむつを使っていた。便秘がひどく、大腸刺激性下剤を多めに投与しても3日間出ないことがよくあった。

 

 相談を受けた熊井さんは、Aさんの生活全体を見直す必要性を指摘。便が出やすい朝食後30分以内にポータブルトイレ(PBT)に座ってもらうとともに、栄養士に相談して食事量を1200㌍から1400㌍に増やした。また、㈱ピラニア・ツールの「トイレでふんばる君」を使い、前かがみの姿勢を取り腹圧がかかるようにした。

 

 その結果、3日後の17日にAさんは初めてPBTで排便。28日以降は毎日排便が続き、31日からは「居室のトイレでしたい」という希望に応え、2人介護でトイレ誘導するようにした。そして8月からは医師・看護師と相談し、下剤の投与を中止。下剤無しで有形便が出るようになった。

 

布おむつからポータブルトイレで排便できるようになったAさん

布おむつからポータブルトイレで排便できるようになったAさん

 

 

1年後には1人介護で居室のトイレで排便できるようになった

1年後には1人介護で居室のトイレで排便できるようになった

 

 

コストが月3万円減

 

 「半信半疑の取り組みが確信に変わった」。Aさんの変化に驚き、喜んだ松岡さんら介護職員は栄養士・看護師と連携し、排せつケア全般を見直し。布おむつと布製カバーをやめ、インナーは㈱リブドゥコーポレーションの「はくパンツ用ピッタリパッド」など4種類を尿量や肌の状態などに合わせて使い、アウターも紙製のテープ止めタイプとパンツ型を各3サイズそろえた。

 

 おむつの定時交換もやめ、個々の排せつリズムに合わせトイレ誘導や交換するよう変更。尿便漏れしないようパッドの当て方も個々の寝方などに合わせて工夫した。また、安易な下剤の使用もやめ、腹部マッサージをしたり、食事に㈱ファインの「食物繊維」を混ぜたりするなど自然排便を促すようにした。

 

 排せつケアの見直しを始め1年。布おむつ使用者30人のうち3人がPBTやトイレで排便できるようになった。Aさんは手すりを持って立てるようになり、今年6月から1人介護に変更。2カ月に1度のペースで家族との外食を楽しんでいる。

 

 また、尿便漏れが減ったことで、おむつ・シーツ交換の負担は大幅に改善。ラバーシーツ使用者も減り、肌疾患や褥瘡リスクも軽減した。コストも布おむつ時代の月25万円から22万円に減った。

 

 さらにはステンレス製大型カートに布おむつなどを乗せて各部屋を回っていた交換方法も変更。3階は各部屋に使うおむつを置く方法に、異食する利用者がいる2階はその時間に必要な分だけ小型カートに積んで回る方法にしたことで、職員の負担は減り、臭いなど衛生面も改善した。

 

 「コストが安いと思い、漫然と布おむつを使ってきた。利用者が『軽くなった』と喜んでくれたのがうれしい」という小山さん。「一人ひとりに合った排せつ用品やケア方法を選ぶ大切さを学んだ。これからさらに走り続けないといけない」と気を引き締める。

 

 アウターを5種類に増やす検討をしたり、移乗ボード・シートを購入したり、移乗用リフトを試行するなど新たなチャレンジをしようという動きが出ている同苑。排せつケア見直しの成功体験は、職員の大きな自信と意欲につながっているようだ。

 

 

 

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