職員主体で腰痛予防 ベルト着用24人が2人に

2016年0603 福祉新聞編集部
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個々の残存機能に合わせ移乗ボードを使う

 長野県東御市の社会福祉法人みまき福祉会(倉澤隆平理事長)の特別養護老人ホーム「ケアポートみまき」は、2011年にノーリフトポリシー(NLP)委員会を設置し、腰痛予防に取り組んだ。職員主体の取り組みは5年で施設全体に浸透。介護職員36人中24人いた腰痛ベルト着用者が2人に減るなど大きな成果を上げている。

 

 

 みまきは日本財団のケアポート事業の補助を受け、全国初の全室個室ユニット施設として1995年に開所。現在5ユニットに66人(平均要介護度3・97)が生活している。

 

 NLP委員会設置のきっかけは、2009年に行った腰痛調査で多くの介護職員がケア時に痛みを感じていると分かったこと。その後、腰痛予防研修会に参加し、リフトや移乗ボード・シートを試用した職員から「利用者にも職員にも安全・安楽な、抱え上げない介護を採り入れたい」という声が上がり、11年4月に理学療法士(PT)、看護師、介護主任、ユニットリーダーからなるNLP委員会を発足させた。

 

 NLP委員会は月1回会議を開き、腰痛予防策や導入する機器を検討。まず、ベッドから車いすなどへの移乗用にロメディック社のボードを、ベッド上でのポジショニング用にシートを各10枚導入し、全職員に抱え上げない介護に取り組むことを周知した。

 

 さらにボードでの移乗が困難な人用にパラマウントベッド㈱の床走行式リフトを4台、トイレ移乗用にアイ・ソネックス㈱のスタンディングリフト2台を導入。浴室には㈱アマノのリフト機能付き個浴を設置した。また、出勤直後や腰部に疲労を感じたときに2~3分程度行う腰痛予防体操も始めた。

 

 初めは「機械は怖い」などベテラン女性職員が拒否反応を示した。それでも機器の使い方やメリットを丁寧に説明することで徐々に使用者が増え、職員にも利用者にも安全・安楽だと理解が広がるにつれ定着していった。「定着するまでは試行錯誤の連続だった」と介護主任の丸山明日香さんは振り返る。

 

スタンディングリフトはトイレ移乗で活躍

スタンディングリフトはトイレ移乗で活躍

 

ケアの均一化目指し

 

 利用者の移乗方法は、ユニット会議で決める。その際はPTが個々の身体状況などを測定し、残存機能を損なわないよう注意する。現在66人中、自力で移乗できる人は19人。ボードは41人、リフトは6人、スタンディングリフトは3人が使用している。

 

 また入浴時は、座位が取れる人はリフト機能付き個浴を、取れない人は機械浴を使う。車いすから着替え台、ストレッチャーへの移乗は㈱タカノの防水布製ボードを使い平行移乗。すべての移乗介護 場面で抱え上げない介護を実現している。

 

 腰痛予防対策を始めて1年後の12年に実施した腰痛調査では、入浴支援時や移乗支援時に痛みを感じる人が09年の79%から23%と18%にそれぞれ激減。80%が「機器導入により腰痛が改善された」と答えた。

 

 NLP委員会の活動は現在、リスクマネジメント(RM)委員会に引き継がれ、腰痛に対する年1回の予防研修や個別相談、また年2回のメンタルヘルス研修も行われるようになった。その結果、介護職員36人中24人いた腰痛ベルト着用者は2人にまで減った。3年間に腰痛で休んだ職員は1人。リフトやボードを使用することで、利用者が移乗時に足を車いすなどにぶつけてケガをすることも皆無になった。

 

 「機器導入に厚生労働省の助成金が活用できたことも大きかったが、何より職員主体の取り組みだったから短期間で定着した」と荒井昭成・法人本部事務局次長は話す。

 

 今の課題はケアを均一化すること。入職3~4年目の職員の移乗ケアを動画撮影したところ、ボードの使い方に差があり、改めて実施したアンケートで7~8人が「ボードが苦手」と答えたからだ。そこでRM委員会はボードが苦手と答えた職員の移乗ケアを撮影し、どこが悪いか考え、正しい方法を学ぶ機会を提供しているという。

 

 腰痛予防対策に取り組んで5年。短期間で大きな成果を上げた背景には、職員の声をしっかり吸い上げ、職員主体の取り組みを進め、移乗技術の向上など職員の悩みに真摯に応える。そんな法人の姿勢があるからだろう。

 

リフトは万全を期し2人で操作

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