46年間 精神科に入院していた男性 今はピアサポーターとして活躍
2016年10月28日 福祉新聞編集部
精神科病院に通算46年間入院した男性が今、青春を謳歌している。群馬県太田市内で一人暮らしする伊藤時男さん(65)。高齢者総合福祉センターに週3日通い、風呂に入ってカラオケを楽しむ傍ら、入院患者を訪ねて自らの体験を語るピアサポーターとしても活躍している。
福島県育ちの伊藤さんは16歳の時に統合失調症を発症。退院できたのは東日本大震災による原発事故がきっかけだ。入院していた病院が閉鎖され、他県の病院を転々として社会福祉法人アルカディア(同県太田市)のグループホーム(GH)にたどり着いた。2014年12月からは市内の一軒家で暮らす。
「銀行のATM、電車の改札、どれもこれも様変わりして分からないことだらけだった」と振り返る。
そんな戸惑いを他の人もきっと感じるだろう。そう思ってピアサポーター養成研修(県が実施)を受け、15年12月に修了。主な活動は精神科病院への訪問で、10人前後の入院患者が伊藤さんを囲む。
懇談(質疑応答)は1回約30分。入院中から川柳を作るのが好きだった伊藤さんは、作品が新聞に掲載された。絵画も趣味で話し好き。話題が豊富なため、あちこちから講演依頼が相次ぐ。
伊藤さんら複数のピアサポーターが所属する地域活動支援センター「ふらっと」の職員は「入院患者の退院を後押しするだけでなく、ピアサポーター自身が生き生きする」と手応えを感じている。
体は丈夫ではた目には精神疾患があるようには見えない伊藤さん。酒は飲まないが、行きつけの居酒屋で常連客と世間話するのも楽しみだ。「今は一人暮らしだが、いずれ家庭を持ちたいな」と照れながら笑う。
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