PTが評価し業者は調整 シーティングで自立度がアップした特養

2016年1104 福祉新聞編集部
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パムックの担当者に調整を指示する遠藤さん

 シーティングに欠かせない「評価」と「調整」を理学療法士(PT)と機器業者が分担することで、個々に合った車いすを提供している特別養護老人ホームがある。東京都足立区の「ハピネスあだち」(橋本飛鳥施設長)だ。専門職が連携したシーティングで利用者の自立度は向上。姿勢保持に対する介護職員の意識が高まるなど良い効果を生んでいる。

 

 ハピネスあだちは、青森県で3カ所の特養ホームなどを運営する社会福祉法人ファミリーが2006年4月に開設した入所定員150人のユニット型施設。シーティングに取り組むきっかけは、同年10月に採用されたPTの遠藤大知さんが、当時の施設長から「シーティングの勉強をしてほしい」と要請されたことだった。

 

 日本シーティングコンサルタント協会の講座などを受講し、個々に合った車いすを選ぶ大切さを学んだ遠藤さんは、翌年シーティングコンサルタントの資格を取得。「初めはシーティングについて全く知らなかった。車いすやクッションの機能ばかり見ていて、股関節の可動域や拘縮などの身体状況をきちんと評価していなかった」と振り返る。

 

 資格取得後、本格的にシーティングを始めたが、施設の車いすは座位保持ができない標準型がほとんど。ティルト・リクライニング(TR)型を購入したり、車いすのレンタルからオーダーメイドまで対応する㈲パムックにオリジナル車いすの製作を頼んだりしたが、すべての人に合った車いすを用意することは難しかった。150人の利用者の評価や訓練・体操、介護職員への移乗やポジショニングの指導などをしながら、車いすを調整・修理することも困難だった。

 

 そこで考えたのがパムックと連携する仕組み。①遠藤さんが利用者の身体状況を評価し、座幅や前座高の調整、不要なフットレストやTR型の介助ブレーキの取り外しなどをパムックに指示②指示に沿ってパムックが車いすを調整③調整した車いすを試用してもらい、効果や必要性を遠藤さんが家族に説明④利用者や家族の希望を聞きながら、必要があれば再調整する−。

 

 パムックは毎週1回訪問し、タイヤの虫ゴムの交換から故障箇所の修理、再調整なども行うが、その数は毎月10台に及ぶという。

 

身体機能を評価する遠藤さん

身体機能を評価する遠藤さん

 

100歳で自走も

 

 現在の車いす使用者は130人(通常型100人、TR型30人)。そのほとんどが、ノーパンクタイヤに交換した㈱カワムラサイクルの簡易調整機能付き車いす「KZシリーズ」、TR型「KXLシリース」を使っている。

 

 KZを使うのは、低床タイプで前座高などを3段階で調整でき、足こぎしやすいから。実際、標準型で入所してきた100歳の利用者が調整されたKZで施設内を自走している。また、ノーパンクタイヤは介護職員の空気入れの負担を無くすために使っている。

 

100歳でも足こぎで自走する

100歳でも足こぎで自走する

 

 シーティングのために力を入れているのが、ベッド上のポジショニングとリフトの活用だ。寝姿勢は座姿勢と深く関係し、リラックスした姿勢で寝ていないと車いす上で筋緊張が高進し、正しい座位保持ができなくなる。そのため安楽に過ごせるようポジショニングを重視している。

 

 また、腰痛対策のために13台導入した据置式リフトは、車いすに移乗させる際に抱え直して座位置を変えなくても済み、利用者や職員の負担軽減にも役立つため大切にしている。

 

 シーティングを始めて9年。車いすを調整し、テーブルの高さなどの環境を整えることで、標準型車いすで入所した人が自走したり、1人で食事を取ったりすることが当たり前になった。姿勢のズレを介護職員が気付くようになるなど姿勢保持の大切さも浸透してきた。

 

 「最初は誰もシーティングの重要性を理解してくれなかったが、今ではケアの中で重要な位置を占めるようになった。ただ、自分を含む職員が車いすの調整や修理をするのは時間的、技術的に難しい。外部に頼めることは任せた方がいい」と話す遠藤さん。今後は正しい座らせ方が徹底できるように職員指導に力を注ぎたいという。

 

 シーティングに取り組む施設では、ともすると担当職員の負担が過重になりがちだ。そうさせないハピネスあだちの実践は、PTと介護職員、機器業者の高い専門性と強い信頼関係があるからこそできることなのだろう。

 

 

 

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