地域共生社会で注目 平塚市の「町内福祉村」とは
2017年02月21日 福祉新聞編集部
地域の問題を住民が「我が事」と捉えるための仕掛けはさまざまだが、全国的に注目されているのは神奈川県平塚市だ。1998年度から小学校区(市内25地区)を単位とした「町内福祉村」の整備を進めている。
福祉村は公民館などの1室を事務所とし、週に4日以上は地域福祉コーディネーターが常駐する。福祉村の活動はサロンの開催など「ふれあい交流」と、ゴミ出しなど「生活支援」の二つ。利用者に費用負担はない。
コーディネーター、交流、生活支援のいずれも担い手はボランティア。福祉村の会長、会計、書記といった役員も同様だ。市は交通費などの活動経費と拠点の家賃・光熱水費を負担する。
「交流があるからお互いに顔見知りになり、『実はこんなことに困っている』などと言えます。また、ボランティアを確保する上でも交流が不可欠です」。
市内に17カ所ある福祉村の一つ、港地区の渡邉孝会長はこう語る。サロンのように気軽に立ち寄れる場を用意することが福祉村の基本だが、外に出向いた交流も重ねている。
海に面した同地区は、地震・津波を想定した災害対応講習会を中学校で開催。「平日の昼間、地元にいるのは中学生だ。いざという時、障害者やお年寄りを避難誘導してほしいし、将来のボランティアとしても期待している」と渡邉会長は言う。
花水地区の福祉村でも小学校の授業としてボランティアによる折り紙教室を開くなど、子どもたちとの交流に力を入れる。同地区の宮田憲二会長は「深刻な問題を抱えた家庭ほど外からは見えづらい。常にアンテナを張っておきたい」と語る。
こうした交流が「面のかかわり」だとすれば、生活支援はそれを下地とした「点のかかわり」だ。支援内容は買い物の付き添い、話し相手、電球の交換など。あらかじめ登録されたボランティアにコーディネーターがつないで支援が始まる。港地区の15年度の実績は379件に上る。
福祉村について同市福祉総務課は「98年度からの19年間で17カ所では整備のスピードが遅いとのご指摘もあるが、福祉村をつくることが目的ではない。時間がかかっても地区ごとによく話し合ってもらうことを大切にしている」と話す。
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