東京パラ(3)カヌー 諏訪正晃選手 自然と一体になり競う
2017年11月01日 福祉新聞編集部
200メートルの短距離を競うカヌー。観客に目を離す隙を与えないスプリント競技で、東京パラリンピックを目指すのが、東京都江東区役所に勤める諏訪正晃選手(32)だ。
土木部管理課で都市緑化に関わる。カヌーとの出合いは約3年前。障害があってもみんながカヌーをできるようにと、仕事の一環で船着き場を提案・整備し、競技も始めることになった。未経験だったが「とりあえず始めてみよう」の精神で週末を利用して地道に練習を重ね、今では日本を代表する選手にまで成長した。
仕事や競技以外では、自身が代表理事を務めるNPO法人東京ユニバーサルデザインコミュニケーターズで障害への理解を深めるイベントを行うなど、多忙な毎日を送る。
種目は、カヌーの片側にアウトリガーと呼ばれる浮きを付けるヴァー部門。カヌーの魅力を一言で言うと「自然を感じられること」と語る。一漕こぎごとに視点が変わる川辺の景色を感じたり、川に集まる水鳥を間近で見たりする。
「緑が好きで、自然が大好き」と柔和に語る表情は、競技が始まると一変する。スピードが求められるレース中は激しくパドルを漕ぐため息は上がり、ゴールに近づくにつれ苦しさを増す。普段からは想像できないような熱い勝負師の姿が垣間見える瞬間だ。
勝負のカギを握るのは「一番良いスピードを持続できるかどうか」と語るとおり、瞬発力と持続力がものを言う。高校2年生の時に脊髄を損傷して足の自由は利かないが、パドルを持つ腕は練習で鍛え上げた。
東京パラリンピックでの目標は「カヌーが生涯スポーツとして、文化的に残っていくきっかけをつくること」。江東区という水辺の街の魅力を最大限引き出すためにも「競技で多くの人の注目を集めたい」と意気込む。
「本番では派手に暴れたいですね」。みなぎる闘志を胸に、今日もパドルを全力で漕ぎ進める。
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